『女性ライフサイクル研究』第6号(1996)掲載

はじめに〜セルフヘルプ・グループ

女性ライフサイクル研究所 村本邦子

 女性ライフサイクル研究所(FLC)を始めて、6年がすぎた。まだ小さかった子どもたちを抱えながら、何かしたいという思いに尽き動かされてやってきたが、だんだんと、振り返って足跡を辿るほど、ゆとりもでてきたし、遥か遠くまで歩いてきたのだと思う。と同時に、スタッフそれぞれが、自分にとってFLCとは何なのか、自分はいったい何者で、何を求めているのかを、常に考えることを余儀なくされてきた。「自分が好きだからやる」というのが、いつも私の鉄則だけど、「好きなことをやるためには、それに伴う好きじゃないこともやらなければならない」という鉄則も別にあって、いくぶん疲労を感じてもいる。それで、今年は、成り行きまかせの無責任な編集を決め込むことにした。
 セルフヘルプという発想は、あまり勉強してこなかったものの、私自身にとっては、ごく自然に身につけてきたことのひとつである気がする。セルフヘルプの語義には、「自分の力でやっていく」と「自分たちの力でやっていく」のふたつがあるらしいが、自立志向の強い私にとって前者は当たり前のことだったし、自分の一面でしかないにせよ、外向的なところのある私にとって、仲間を求めるのも半分まで自然なことだった。もう半分が残ったのは、私がそこまで困っていなかったことによるのだろう。それが変わったところから、FLCは生まれた。子どもを産み、育てること、パートナーと向き合うことには、現実的な困難が多々あったからだ(その意味は、人によって違うかもしれないが、少なくとも私にとって、それはクリエイティブかつチャレンジングである)。
 セルフヘルプ・グループの前提には、人々が困っていることと、孤立していることの二つがあるのだと思う。ごく自然に人々が支えあっている社会ならば、あえてセルフヘルプ・グループを言う必要はないだろう。したがって、そこで目指されるものはふたつ、ごく自然に支えてはくれない社会に対して、自分たちの生きにくさを訴えていく側面と、互いに支えあう(愛しあう?)ことで生きやすくしていく側面である。「運動」と「癒し」と言い換えてもいいかもしれない。
 私がそのことを意識するようになったのは、アドリエンヌ・リッチと出会い、女性解放運動の流れに自覚的に繋がるようになってからだ。自分が独立独歩の気分でいた時には、一対一のサイコセラピーしか思いつかなかったが、自分を社会的歴史的に位置づけたとき(人々と一緒に生きている自分に気づいたとき)、セルフヘルプ・グループの力を実感するようになった。
 そういうわけで、今回の特集のきっかけは、「これからは、セルフヘルプ・グループの時代だ、セルフヘルプ・グループについて学びたい」と思ったことにある。本来は、セルフヘルプ』グループとは、自然発生的に生まれ、試行錯誤を繰り返しながら形を成すものだろうが、このような時代であるがゆえに、意図的につくる―初めに、その必要性と意義を感じる人がいて、「仕掛け人」となる―場合もあろう。この特集では、セルフヘルプ・グループの定義をかなり曖昧にしたうえで、さまざまなグループや人々の経験と学びを集めることにした。いつものように、「たまたまご縁のあった」方々に執筆をお願いしたが、快く原稿を寄せて頂き、たくさんの問題提起をしてもらった。
 結論を出すつもりはまったくないが、私自身が興味をもっていることは、1. メンバーシップとリーダーシップのありかた 2. 運動と癒しのバランス 3. 専門家の関わり方(不要論も含め) 4. 経済的にどう成り立たせるのか 5. グループ全体の歩みと成長である。第一部は、まとまった形で原稿を寄せて頂いたものを歴史の長いものから、第二部は、グループ紹介として寄せて頂いたものをアルファベット順に並べてある。第三部は、せっかくだから、FLCのセルフヘルプ的なありかたも、この際、振り返ってみようということになって後から追加したものである。
 セルフヘルプ・グループの原則に従って、「書きっぱなし」「読みっぱなし」で、読者の方々にはどのように読んで頂いても構わないが、さまざまなグループがあることを紹介することで、必要に応じて連絡をとってもらえるように、また、さまざまなグループのあり方を参考に、必要に応じて新しいグループをつくってもらえるように、そして何より、喜びも苦しみも含めて互いの活動を知り合うことで支えあえるように、そんなセルフヘルプ的な役割を、この雑誌が少しでも果たせたら嬉しい。
 ここまで活動を続けてこれたのも、FLCの活動に理解を示し、支えてくださっているみなさんのお陰だと感謝している。最後になりましたが、原稿を寄せてくださったみなさん、毎年、表紙とイラストを描いてくださるJUNさんと、読者のみなさんにお礼を言いたいと思います。