今月のトピック by 村本邦子

2012年10月 「人間彫刻/家族造形法」の魅力

もう十年近くになるだろうか、早樫一男さん(同志社大学)を研究所にお招きして、「人間彫刻/家族造形法」を使ったスタッフの勉強会を続けている。言葉で説明するのは難しいが、人間を粘土の塊になぞらえ、家族の彫刻を作ることで、家族理解を深めようというものだ。このたび、早樫さんが「家族造形法の深度〜二日間家族造形法ざんまい」というワークショップの企画を立て、ゲストスピーカーを頼まれたので、自分自身も丸二日、フルで研修に参加してきた。私に与えられたテーマは、「家族造形法の魅力を語る」というものだったが、四点にまとめてみた。

その一は、「絶対」をひっくり返す面白さだ。たとえば、「鈍感で自分勝手なDV夫」や、「男にペットのようにかわいがられて嬉しい女」など、「絶対に理解できない!」と思う人であっても、自分がひとたび粘土でその役をやれば、不思議とその気持ちがわかってしまう。一度など、DV夫の「認知の歪み」さえ経験した(自分に微笑みかけていると見えたものが、実は妻の方は恐怖を感じていたという。今なお、狐につままれたような気持ちだ)。つまりは、あらゆる人への共感性を養う訓練になるということ。とくに駆け出しの対人援助者に有用だろう。

その二は、システム論的視点を身につけることができることだ。人は人である限り、特定の構造のなかに置かれてみれば、似たり寄ったりの反応をするものである。きょうだいの順番によってある程度まで性格が規定されるというのは、このためである。もちろん個別性は大きいが、同時に普遍性も存在する。そして、「風が吹けば桶屋がもうかる」というように、小さな変化が全体に影響を与え、一見何の関係もないように見えるところにも変化をもたらすということが実感できる。これはシステム論的視点だ。

その三、特定の家族について援助方法を考えるうえで役立つ。基本的に粘土を置くだけなので、個人情報はいらないし、準備もいらない。チームのメンバーで力を合わせ、それぞれの家族メンバーに共感的な気持ちを寄せながら家族理解をしようと努力すること自体がその家族への暗黙の応援メッセージになる。最後に粘土の衣装を脱ぐ時、「この先、この人によりよい人生が開かれますように」と自然と心のなかで祈るものだ。同時に、援助チームの凝集性をも高める。

その四、人間彫刻は家族だけでなく、職場や組織、また構造的力関係を理解するうえでも役立つ。先月、平和ワークショップの研究会で、高さを違えた三人の人物の彫刻を置くワークをしたが、これは暴力・抑圧構造を理解するうえで驚くほど有効だった。システム論がミクロからメゾ、マクロまでつなぐものであることを示すのだろう。

体を使った非言語情報でのコミュニケーションであることも特徴である。人は言語レベル、意識レベルとは違う次元で多くのメッセージを発しているものだ。人間彫刻/家族造形法をやるたびになんだか人間が愛しくなるからおもしろい。