今月のトピック by 村本邦子

2009年4月 タラソセラピー(海洋療法)を体験して

今年の年報のテーマは「体の声を聴く」だ。毎年、この時期になると、宿泊研修を行って、皆で議論を深めながら、それぞれの研究を洗練させていく。議論の内容については、秋のお楽しみにということにして、体験的なタラソセラピーについて紹介したい。タラソセラピーは、潮風や日光を浴びながら、海水、海泥、海藻などを活用し、自然治癒力を高める自然療法として、フランスを中心に多くの人が愛用しているそうだ。海水は、人間の体液とほぼ同じ成分で、内側の細胞を活性化させ新陳代謝を良くし、リラクゼーション効果やデトックス効果がある。

いくつかのメニューから選択して、コースを作成した。初めは、ハイドロマッサージバス。海藻を加えた暖かい海水の泡と水流でマッサージして、血行促進。次は、アクアエクステンションという海水の中のストレッチ体操で、さらに血行促進。それから、ファンゴテラピーと呼ばれる海泥パウダーと海水を混ぜた泥パック。最後は、エアロゾル。暗くした部屋で、海水をマイナスイオン霧状の粒子にしたものを吸いながら、しばらく静かに横になる。メニューの合間には、休憩室で、海を眺めながらハーブティーを頂いたが、何とも気持ちいい。ところが、途中から、ザワザワとまさに体の声が聞えてきて、急に、ダイビングをしたくてたまらなくなってきた。

考えてみれば、ダイビングは、タラソセラピーそのものではないだろうか。潮風も日光も、海水も海藻も、そして、運動もある。美しい珊瑚や小さいのから大きいのまで、魚の群れ・・・。一日、海に入っていると、心地よい疲れで、お腹もすくし、夜もぐっすり眠れる。忘れられないのは、パラオのミルキーウェイ。そこの海水には、化粧品にも使われている純白で粒子の細かな泥が溶けているので、メロンソーダみたいなきれいな色をしていて、ただ浮かんでいるだけで、体が喜んでいることを感じる。

それでは、ダイビングはセラピーなのだろうか?結果としてセラピー効果があることは間違いないが、べつにセラピーを目的にしているわけではないし、それ以上のものを含んでいるような気がする。ときに、人生の修行のように感じたり、トランスに近い状態でスピリチュアルな体験だったりもするし、ひるんだり、恐怖を感じることもないわけではない。

今の私の関心は、何もかもに「セラピー」をつけて商業化していく時代は何を意味しているのか?ということ。もちろん、自分の足場であるサイコセラピー(心理療法)だって例外ではない。本来は、自然な生活のなかに、結果としてもたらされる癒しがあることが望ましいのだろう。さまざまな種類のセラピーが専門化していくのは、私たちの自然な生活のなかから、それが失われつつあるということではないだろうか。現代のアンバランスな生活が心身を歪ませ、癒しを求めさせるのだろう。歪みが大きければ大きいほど、セラピーは目的としての必要性を高めることになる。今さら原始時代に戻ることはできないけれど、それでも、できるところから、バランスの良い生活を心掛けられたらと思う。

今回のタラソセラピーの一番大きな収穫は、体の声がはっきりと聴こえ、海の中にいる体の感覚が蘇ったこと。長く潜っていないが、今年は海に帰りたいものだ。