今月のトピック by 村本邦子

2008年10月 体の叡智

 昨年に引き続き、「21世紀統合医療フォーラム」の第2回に参加した。最初の基調講演は、サンフランシスコ州立大学のエリック・ペッパー先生。ソマティックス(=「一人称のからだ」と訳していた)とフィードバックの役割がテーマだった。健康に役立つのは3つ、@食事 A体を動かすこと B他者や世界に向けてよいことをすること だそうだ。@AがBと並列して挙げられているのが新鮮だった。そして、Bの効果は持続性があるとのこと。な〜るほど。

 ペッパー先生のプレゼンでは、途中、パワーポイントの画面に定期的(15分おき?)に、「体を動かす時間だよ!」というコマが飛び込んできて、簡単な運動の動画が始まる。これが始まると、話の途中でも、先生含め、みんな立って、伸びをしたり、隣の人と背中を合わせてゴニョゴニョしたりしなければならない。意外で、笑えて、楽しかった。とにかく、定期的に体を動かし、ちょっとだけでもエネルギーレベルを上げるのがよいのだそう。

 そして、バイオフィードバックの実験。フロアから男女2人が前に出て、指先に電極をつけ、波の動きがスクリーンに映し出される。ちょっとした不安や安心が見事に現れる。おかしかったのは、フロアから選ばれた3番目の人が前に呼ばれ、「これから、この2人にキスしてください」と指示が出されたときのこと。フロアの私たちもギョッとしたが、前の2人はもっと驚いたに違いない。見事に波が大きく変動した。もちろん、実際にキスなどしない。なんて体は正直なんだろう。しかも、波の動きは、イベントよりちょうど2秒遅れて発生する。これが、神経から指先までに信号が届く時間なんだそうだ。

 さまざまな心身症の人々のバイオフィードバックの変化を見せてもらったが、見事と言うほかない。心と体はこんなにも密接に関係しているのだ。

 今年は、数あるワークショップのなかから、岸原千雅子さんによる「アロマセラピーとドリーミング」、藤原千枝子さんによる「ソマティック・エクスペリエンス」、藤井里佳さんによる「フェルデンクライス」を選んで参加した。どれも面白かった。体はなんて精巧にできているのか、私たちが小賢しく頭を使って、どんなに一生懸命考えたとしても、体や自然の叡智には到底及ばないのだということを痛感した。そして、さまざまなワークを通じて、すっかりリラックスした。

 もうひとつはイメージの面白さ。とくに、アロマを使ってのドリーミング体験は新鮮だった。ひとつの香りを、イメージ体験への入り口として使用するというのは、たしかにグッドアイディアだ。香りであるから、ペアで、あるいはグループで、体験を分かち合うこともできる。つい先日、音楽を使ってイメージの分かち合いをやって、興味深く思ったが、いろいろ使えそう。若いころと比べ、生き生きとした夢を見ることがめっきり減ってしまったが、久しぶりにイメージがリアルに活性化された体験だった。

 今日の午後のシンポでは、「女性のライフサイクルと統合医療」のテーマで司会をやったのだが、私自身、ライフサイクルによる自分の変化を感じる今日この頃である。更年期症状というのはあまり感じないが、めっきりエネルギーレベルが落ち、若かった時のようにたくさん眠ることができなくなった。ペッパー先生の説に反して、エネルギーレベルを上げようという気にもなっていない。今は、省エネモードで生きていけばいいんだと感じている。これも体の叡智か。

 ボティワークをやっている人たちは、さすがに若々しくエネルギッシュに見える。口を揃えて、「体から入れば簡単!」と言う。世の中には、体から簡単に入れる人とそうでない人がいるのだろう。私自身は、加齢とともに、体が解放され、簡単に入れるようになりつつあるように思う。頑張ったり、無理したり、耐えたりするのでなく、「体に気持いいことがいい」という発想もますます気に入っている。健康の@ABを心掛け、体の叡智に耳を傾け、元気に長生きできるといいな。