ソマティック・エクスペリエンス(SE)

(1) 理論

SEとは、リヴァインが25年以上にわたる臨床経験から発展させたトラウマ治療法である。医学生物物理学博士・心理学博士であるリヴァインは、数千回にのぼるクライエントとのセッションを重ね、トラウマの原因は出来事ではなく、出来事に対するその人の神経系の反応であることを突き止めた。危険にさらされた生物は通常、逃げるか戦うかで反応するが、そのどちらも不可能な場合は、凍りつくことによってその場を切り抜けようとする。リヴァインは、凍りつき反応(硬直)によって、脅威に対処するために動員された巨大なエネルギーが解放されずに神経系のなかに閉じ込められると考えた。動物はエネルギーを自然に解放して元の状態に戻ることができるが、人間は高度に発達した脳が(思考の形で)邪魔をするため自然な解放が起こらず、行き場を失ったエネルギーがうつやパニック、不眠などのさまざまな症状として表れる。よって、トラウマを乗り越える鍵は、未解放のエネルギーを解放しようとする身体の自然な衝動を知性で抑え込まずに、フェルトセンス、つまりその衝動を身体の微妙なレベル(内なる身体感覚)で感じ取れる場所を作ることで、余剰エネルギーを解放していくことにあるとする。

(2) 手法

具体的な手法としては、まずクライアントに身体の内外での資源(リソース)をフェルトセンスを用いて体感してもらい、それからほんの少しずつ、トラウマの身体感覚へとアクセスしていくことで、わずかずつトラウマによって閉じ込められたエネルギーを解放していく。トラウマによって硬直が起きた際には通常そこに恐怖の感情がともなうことから、恐怖と硬直を少しずつ切り離して、硬直状態のフェルトセンスを感じられるようにする。それによって初めて、身体が未完了の衝動を終えるための条件が整うとしている。

  • 引用文献:「身体感覚に耳を傾けるトラウマ療法〜ソマティック・エクスペリエンスに学ぶ」西順子、『女性ライフサイクル研究第19号』
  • 参考文献:『身体と心をつなぐトラウマ・セラピー』リヴァイン著、藤原千枝子訳、雲母書房。