ニュースレター No.61 / 2007年2月

特集 『面接交渉』をご存知ですか?

 面接交渉という言葉をご存知ですか?
 子どものいる夫婦が、離婚した場合、両親のうちどちらか一方しか「親権者」になることはできません。親権者(または監護者)にならなかった親が、子どもと会って一緒に時間を過ごしたり、手紙や電話で間接的な交流を持つことを「面接交渉」といい、その権利を「面接交渉権」といいます。

 面接交渉権は、民法などに規定された権利ではありませんが、過去の判例や、家庭裁判所での実務では、「子の監護について必要な事項、必要な処分」として、認められています。そして、この権利は、「子どもに会いたい」ための親の権利ではなく、「子の監護のために適正な措置を求める」権利だとされています。

 日本では、夫婦間で結婚生活が営まれている間は、子どもの親権者は父母両方、つまり、共同親権ですが、離婚後は共同親権が法的に認められておらず、単独親権となります。そのため、「離婚後、離れて暮らす親子は一切関わりを持たない方が良い」とされていた風習があり、「会わせる必要はない」と考える方が、馴染みある方々も多くいらっしゃることと思います。「子どもに親への情が湧いて、余計に可哀想だ」というような声を聞くこともあります。たとえば、どうしても子どもの様子が知りたい、愛しい思いが抑えきれないといったときに、子どもを思う気持ちがあるならば、子どもには気づかれないように、こっそりと顔を見にいくような(陰からそっと見守る)ことが美談のように扱われてきたこともあります。

 北米では、離婚の増加に伴って、約30年前よりこの分野が注目され、親の離婚を経験した子どもたちへのインタビューなどから、子どもたちにとって親の離婚がいったいどういうものなのか、どのように対応することが子どもにとって離婚が悪影響とならないのか、などの調査研究がなされてきました。そして、「子どもの人格の円満な発達、健全な成長のためには、父、母、双方からの愛育を継続的に得ることが重要である」と結論づけられています。もちろん、なかには残念ながら、子どもに危害を加えたり、愛情を注いでやることができない親もいるため、例外はあります。けれども、夫婦としてはうまくいかず、離婚という選択を選ばざるを得なかったとしても、そのふたりが、子どもの親として協力できないとは限りません。子どもが心身ともに、安全に、健やかに成長できることを望んでいる両親であるならば、離婚によって親子の関係が遮断されるのではなく、父・母・子の家族で一緒に暮らすことはできないけれども、父子、母子の関係をそれぞれ尊重して、絆を深めていくことは、子どもにとって幸せなことではないでしょうか。

 諸外国同様、日本における離婚数の増加も見過ごせない数字を現しています。平成17年度の人口動態統計によると、平成17年に離婚した26万件の約60%が、親権を行わなければならない子ども(20歳未満の未婚の子ども)がいる離婚であり、その子どもの数は262,345人とのことです。その子どもたちの、離れて暮らす実親との交流の有無を正確に示すデータはありませんが、ある家庭裁判所調査官の方は「この5年ほどで、面接交渉権についての調停が急激に増えた印象がある」とおっしゃっていました。

 私は、NPO法人FLC安心とつながりのコミュニティづくりネットワークで「Vi-Project離れて暮らす親と子の面会・交流サポートプロジェクト」を運営していますが、このプロジェクトでは、離婚・別居後も、両親の双方が、子どもと別居親との交流をもつことに同意されている方を対象に、面会・交流のコーディネートを行っています。

 全く迷わずに、離婚を決めた方はおそらく少数だと思います。離婚後も、なお、「これで本当によかったんだろうか?」「自分は我慢が足りなかったんじゃないか、もっと我慢すればよかったんじゃないか」「子どもにかわいそうなことをした」と悩むこともあるかもしれません。家族にも「正解」があれば、わかりやすくていいですが、そうではなく、次から次へと、悩みも出てきます。様々な親子関係、家族関係がありますので、「どんな状況でも、どんな親でも、会わせることが最善。会わせるべき!」とは思っていません。けれども、子どもの同居親、別居親の双方が「子どもと別居親との関係も維持してやりたい」「どちらからの愛情も、子どもに伝えてやりたい」そう考えていらっしゃる方々に、第三者が(元)夫婦の間に入ることで、当事者間での争いが幾分か緩和され、子どもにとってより良い交流となるよう、交渉の余地を生じることができれば、とサポートにあたっています。

 様々な価値観、親子観、家族観はありますが、人と人とのつながりは、敢えて切った方が良い場合もあれば、乗り越えなくてはいけない多少の困難を伴っても、互いにかかわり合い、維持していく努力が、豊かな経験へと実を結ぶこともあるかもしれません。離婚後の親子の交流は、決して、(元)夫婦の関係を維持しようとするものではなく、離婚しようがしまいが、親が子に負う責任は変わらないことを意味します。親の離婚を経験する子どもたちの数は、これからもますます増加していくことが予想されますが、一人でも多くの子どもにとって、幸せな、親と子のつながりが促進されていく社会となるよう、どうぞ皆様のお力添えを宜しくお願いいたします。

 この紙面をもちまして、離婚後の別居親子間における面接交渉をご紹介させていただきました。

(桑田 道子)