女性ライフサイクル研究所 News Letter

No.119

実力をだすこと

長川 歩美

ここぞ!という時に強い人もいれば、大事な時ほど失敗して悩む人もいる。準備の量や努力の質などにも関係するだろうが、一度きりの本番や決して失敗したくない肝心なときに、人はどのようにしたら安定して実力をだすことができるのだろうか。

最近では、人が緊張のきわめて高い状況で、これくらいできると期待していた力が出せない時の理由やその対処方法について、脳科学と心理学の両面から様々に研究されている。シアン・バイロックは『なぜ本番でしくじるのか(河出書房新社)』の中で、プレッシャーやストレスが人の脳と行動になぜ、どのように作用するのかについて、音楽・スポーツ・仕事・勉強などの分野にわけて解説している。

事態をむずかしくするのは、ストレスの多い状況はいずれも似ているものの、分野あるいは場面によって、脳と体にどのように影響するのかが異なっていて、一部の活動では役にたつことが、必ずしも他で役立つとは限らないということだ。一例を挙げると、音楽やスポーツの分野では、本能を見失い自分が行っていることについて考えすぎる時に、「分析による麻痺」が起こって動きや流れがぎこちなくなったり滞ったりする一方で、仕事や試験などでは避けるべき本能にとらわれて、自分のやっていることに充分な注意を向けられずに上手くいかないこともあるのだそうだ。

大切なことは、取り組んでいる分野・置かれている場面の特質を理解し、プレッシャーを受けた脳がどのように働くのかを知り、対処法を学ぶことだろう。共通項は「成功したい」「見られてる」などの自意識が強いと、プレッシャーがかかる場面でしくじりやすい傾向があり、「〜してはいけない」と意識すると人間の脳はかえってそのやってはいけない方向に向いてしまうという。成功への執着や自他からの評価に拘らず、自分がそうありたいイメージを紡ぐ力を育んでいくことが、実力の発揮には必要なようである。