女性ライフサイクル研究所 News Letter

2009年1月発行第83号

マインドフルネス−落ち込みや不安に対するセルフケア

安田 裕子

マインドフルネスとは、今の瞬間に常に気づきを向け、あるがままに知覚し、それに対する思考や感情には囚われないでいる有り様をいいます。私たちが何かを知覚する際、通常ほぼ自動的に解釈したり評価する思考が起こり、同時に、好き嫌いなどの感情が加わった上で、認識が成立します。しかし、そうしたことの多くが個人的なバイアスに依るため、現実をありのままに知覚することが困難になることがあります。心の中の出来事にすぎない思考や感情が瞬間的に割り込んでくるために、現実をあるがままに体験できなくなり、それが限りない誤解や苦しみを生む原因になっていると考えられます。

それではマインドフルネスはいかに実現するのでしょうか。色々と考えてしまうのは、過去の体験を思い出して悩んだり、あるいは未来に対する心配や期待をしているかのどちらかであり、今の瞬間には思考の題材がありません。よって、今の瞬間に常に意識を向けるようにし、余分な思考や感情が生まれてきたらそれを自覚しつつもまた今の瞬間に意識を戻す、ということを繰り返し練習することが大切です。その時、身体をできるだけゆっくりと動かす「スローモーション」、今行っていることを切れ目なく頭の中で簡単な言葉で確認し、今の瞬間にとどまるようにする「実況生中継」、動作ごとに変化する身体の感覚や浮かんでくるイメージや考えの変化を、解釈せず感じそこにとどまろうとする「感覚の変化を感じ取る」という三つの方法が役立ちます。これらは、悪循環になりがちな気分の落ち込みや不安に対して有効です。

どんな気持ちや思いが湧き上がってきても、また自己イメージでさえも、一過性に心の中に生まれてくるメンタルイベントにすぎないのだと考え、うまく距離をとるようにしましょう。うつ状態の場合、ネガティブに偏っていることが多い自己イメージに巻き込まれずに距離をとることができれば、抑うつもひどくならずにすむでしょう。