女性ライフサイクル研究所 News Letter

2009年1月発行第83号

加害者対策

村本 邦子

2月は「ナヌムの家」を訪れた。歴史記念館の展示を見て、あるシステムの中に入れられてしまうと、人はどんなにたやすく人間らしさや批判能力を奪われてしまうのかをあらためて痛感した。自分がこの時代、このなかの兵士だったらどう振舞っていたのか、正直なところ自信がない。逆に言えば、良いシステムを作ることができれば、大半の人は人間らしく生き、批判能力を保つことができるのかもしれないと考えてみることにした。

続いて3月にはソウルの家庭裁判所と保護観察所を視察した。どちらにおいても、教育が非常に重視され、加害者プログラムが充実していることに感銘を受けた。たとえば、保護処分となった加害者は、社会奉仕プログラムや加害者更生プログラムの受講が義務づけられる。性犯罪の加害者教育も充実しているが、それでもダメだった場合はGPS内蔵の足輪をつけるという思い切った対策も取られている。

日本では、加害者対策がなかなか進まない。政府も調査研究やプログラムの試行をしているが(内閣府「配偶者からの暴力支援情報」のHPで見ることができる)、なかなか実現しない。被害者の視点に立った警戒や効果への疑義はよくわかる。被害者の権利は長きに渡り軽んじられ、国家権力対加害者という文脈の中で加害者の権利が語られてきた歴史もあって、加害者対応について語ることにある種のタブーがあるとも思う。被害者への援助が最優先されなければならないのは当然である。たとえ加害者に気の毒な事情があったとしても、被害と加害は差し引きできるものではなく、個別の事件においては、はっきりと加害の責任が問われなければならない。

これまで、被害者の支援をする自分たちが積極的に加害者に関わることはせず、誰か他の人たちに委ねたいという姿勢を取ってきたのだが、いつまでも待っているわけにもいかない。暴力が防止されるシステムについて積極的に考えていきたいと考えている。