女性ライフサイクル研究所 News Letter

2009年1月発行第83号

アートセラピー

長川 歩美

絵を描く、音楽を聴く、美術鑑賞に出かけるなど、私たちは日常的にアートを楽しんだり、アートを通じてストレス発散したり、エネルギーをもらったりしています。あえてアートに触れようとしていなくても、ふと耳にする街頭の音楽や、レストランの壁にかかっている絵に心を動かされることもあるのではないでしょうか。あらためてアートセラピーというとなにか特別な方法のように聞こえますが、その本質は私たちが普段アートから受けている恩恵を、心理療法の場で凝縮して得られるようにと意識して整えられた方法だといえるかもしれません。

アート体験には@他の人の創作に触れて刺激を受ける A自分が創作を体験する、という受動的なものと能動的なものがあります。アートセラピーにもこの2種類があって、@は、ある音楽を聴いてどんな感情が起こるかを体験したり、自分の心に触れる絵を選択して自分を発見するような方法 Aは、その時の気持ちに合った絵をかいてみたり、粘土で作品を作ってみたりというように、自分の中から出てくるイメージを表現することを通じて自分を発見する方法です。

ユングは「もろもろの感情をイメージに翻訳すること、すなわち感情のうちに隠されているイメージを見出すことに成功する分だけこころの平安が訪れる。」といっていますが、他の人の作品に触れることも、自分で創作することも、自分の感情のうちに隠されていたイメージを見出す体験になり、こころの平安につながるのだと思います。

アートセラピーで大切なことは、上手くあるいはきれいに作ろうとしないこと。カウンセリングで前向きなことよりも、心に浮かんだことをそのまま話すことが大切であるのと同じように、アートセラピーではその人のそのときの状態、そのままを思いついたまま、出てきたままになんとなく表現していくことが大事だとされています。上手であることが評価される傾向から、絵や音楽が苦手だと敬遠したくなる方も、一度自分を発見するためのアートを体験されてみてはいかがでしょうか。