女性ライフサイクル研究所 News Letter

2009年1月発行第83号

『心的外傷と回復』を読む

渡邉 佳代

DV、虐待、いじめ、性被害、戦争、災害などの被害がもたらすトラウマ(心的外傷)は、安心と信頼、そして人と人とのつながりを破壊します。しかし、人は逆境をはね返す力(レジリエンス)を備えており、安心できる他者や場において、再び生きる力を取り戻していきます。逆に言えば、安心やつながりを感じられないコミュニティでは、トラウマは深刻化するでしょう。私たちは、今、どのようなコミュニティに暮らしているのでしょうか。

本書の著者は、米国ケンブリッジ病院の精神科医ジュディス・L・ハーマンであり、女性の視点から、トラウマを歴史的・社会的文脈の中に位置づけて解説し、今なお被害に苦しんでいる人たちへの回復の道標を示します。本書を読み進めると、私たちがどのような社会・コミュニティに暮らし、いかに暴力からの影響を受けているかを痛感せざるには得ません。また、トラウマという心の傷つきは、何も特別なものではなく、人の生の営みの中にあり、人生の一部であることも感じます。

ハーマンはトラウマからの回復を、@安全の確立(安心・安全に生活するために、自分の身体や環境をコントロールしていくこと)、A想起と服喪追悼(トラウマとなった経験を振り返り、失ったものや得られなかったものを悼むこと)、B再結合(未来に向けて、再び自分や人、社会とのつながりを育んでいくこと)とし、長い回復過程の道標を示します。この回復には、安心・安全な場において、信頼できる人や社会的資源などのサポートが不可欠です。また、回復過程は人のライフイベントやライフサイクルにより、繰り返し見直すことがあります。

当研究所・京都支所では、毎月1回火曜日の午前中(不定期)に、本書の読書会グループを行っています。本書を読み進めながら、一緒にトラウマについて学び、女性が抱える生きづらさや傷つきを整理して、自分の気持ちを大切にすることや、主体的に生きていくための第一歩になればと願っています。