女性ライフサイクル研究所 News Letter

2009年1月発行第83号

映画やドラマで描くことの功罪

前村 よう子

子ども虐待、レイプ、デートレイプ、人身売買、覚醒剤、いじめ等々。少し前なら映画やドラマの題材にはふさわしくないとされたものが、ここ数年、次々と映画やドラマで描かれている。それも「あり得ない架空の話」としてではなく、「あっても不思議ではない話」「おそらく似たような事が多々起こっているだろう話」として描かれている。

映画では、「闇の子供たち」が、現時点(2010年6月)では一番印象に残っている。原作は梁石日が綿密な取材を元に著しており、映画はその著作よりも更に新しい取材内容を踏まえた上で描かれていた。タイの子ども達に対する性奴隷としての人身売買と臓器売買の実態について丁寧に描かれていた。私たち日本人がこれらの犯罪行為の加害者側である事実も突きつけられた。

ドラマでは、現在放映中の「Mother」から目が離せない。主人公が、虐待にあっている教え子を助ける為に、その子を誘拐するという部分は、ドラマとして作りこまれた部分だが、それ以外の部分、例えば、我が子を大切に守り育ててきた母親が、なぜその子を虐待死させる寸前まで追い込まれたのかが丁寧に描かれている。また、母親やその愛人から虐待されている子どもの心の葛藤も、子どもの行動の矛盾も、余すところなく丁寧に表現されている。

映画やドラマで描かれることにより、辛い過去の感情を再体験する人もいるだろう。一方的な見方が蔓延する可能性もあるだろう。だが、こういった作品を上映・放映することで一人でも助かる命があるなら、これからも作り続けてほしいと関係者に願う。