女性ライフサイクル研究所 News Letter

2009年5月発行第87号

パワーハラスメント

津村 薫

日本の中小企業従業員の10人に1人が、過去1年間に自殺を考えたことがあるという。「パワーハラスメント」の名付け親は、クオレ・シー・キューブ代表の岡田康子氏だ。東京都で長年、労働相談を受けてきた金子雅臣氏によれば、平成7年に「職場の嫌がらせ」という相談項目を設けたという。平成大不況の中、リストラが起きた。自己都合退職にさせたい組織側が究極の方法として、「いびり出す」方法をとるという。メーンターゲットは中高年労働者。リストラが職場のパワハラを顕在化させたという側面がある。

昨今のパワハラは、@リストラ絡みのいじめ、A職場の労働強化(ノルマ、配転等)、B能力主義、成果主義など、競争の行き過ぎによる人間関係のきしみ、C女性の社会進出に伴う男性中心の意識の揺らぎや反発、D職場のコミュニケーションが難しくなり、何らかのさざ波がいじめに発展していく−などに分類できるという。

いじめを規制する法律は制定されていないため、いまも場当たり的に対処されているのが現状だと、金子氏は述べる。セクシュアル・ハラスメントと同様に、これは初期対応が重要だ。組織側が対面重視の余りに被害者の訴えを必要以上に押さえつけ、さらなる事態悪化に至るケースは少なくないという。またパワハラが横行する職場ではモラルダウンが起きている。生産性も低下するので、組織にとってはマイナスなのだ。不況下では、ルールなど守っていられないという無秩序が起きる。その結果、職員の経験や技術という財産は継承されない。

パワハラを起こさない職場作りをすることは、生産性を上げ、職員の心身の健康の保持増進に繋がるなど、組織にとって、実は有益なことだ。相談窓口を作り、迅速な対応を心がけたり、公的な相談情報を職員に広報する、職員研修を実施するなど、さまざまな取り組みが求められる。被害者が心身を病むまで辛抱し続けることなく、安心して助けを求めることができる、また、加害者が加害行為を止め、誠実に自省できる支援体制など環境整備を望みたい。

参考文献:
金子雅臣(2008)『部下を壊す上司たち』PHP研究所
金子雅臣(2003)『パワーハラスメントの衝撃』都政新報社