女性ライフサイクル研究所 News Letter

2009年3月発行第85号

筆跡から

桑田 道子

心理検査のひとつに投映法があります。投映法では、非構造的な場面で与えられた刺激に対する反応から、その人固有の考え方、物事の意味づけ方を洞察していきます。反応には、その人の持つ欲求や感情、日頃の行動、習慣が現れますが、さらに、その人自身が語り得ない、あるいは語ろうとしない、無意識の欲求や受け入れ難い感情を見出すきっかけとなることもあります。

投映法は5種類に分類され、そのうちのひとつ「構成法」の「ロールシャッハ・テスト」はご存知の方も多いでしょう。インクを落として偶然出来た何種類かのしみがどのように見えるか、感じるか、という反応から符号化していくものです。

先日、筆跡診断士の方の話を聞く機会がありました。筆跡を分析し、そこから内面的特質を見出していく方法も、投映法の5種類の分類のひとつ、「歪曲法」に含まれるそうです。

その人の性格が行動に出る、というのは容易に納得できる話です。大股でワシワシッと歩く人もいれば、常に小走りの人もいる。前者は堂々とした自信家かもしれないし、後者はきっちりした真面目な人、多少、神経質でせっかちなところがあるかもしれません。この足を大きく踏み出すか、小さく踏み出すかが行動の違いで、筆跡も同じように、線を短く引くか、長く伸ばすか、角をつくるか、曲げるか…というふうに行動に違いが出ます。つまり、「人の性格はその行動に現れ、筆跡が行動の結果として現れるのなら、その人の性格は筆跡に現れる」ということなのです。

何がどう、という診断結果については専門家に任せますが、たとえば「門・口・京・子・様」といった字から、性格やそのときの気分を見ていくそうです。小学生のときに習う簡単な字を、その後、どのように変化させて、現在どんな字を書いているかには、確かにその人の判断基準や習性が影響されているように思います。筆跡診断は、ただ書き癖を見つけて「この字とこの字を書いた人は同一人物」と鑑定することだけが目的ではないようです。なにげなくしていることや癖にも、これまでの固有の過去や性質が影響を与え合っている背景があって、今を築いていることを、改めて考えてみるきっかけとなりました。

【参考資料】
『ホントの性格が筆跡でわかる』森岡恒舟、旬報社
『心理臨床の基礎』小野けい子、放送大学