女性ライフサイクル研究所 News Letter

2009年1月発行第83号

環境移行

安田 裕子

人生にはいくつもの節目となる出来事があります。入園、卒園、入学、卒業、就職、結婚、退職など、多くの人が経験する出来事もあれば、災害や事故など、予測しようもなく突然に降りかかる災難や困難などもあるでしょう。こうした人生における様々な出来事や移動によって環境が変わることを、環境移行といいます。

環境移行は、不安や混乱やストレスをもたらす危機的状況ともなりえます。社会学者ホームズと内科医レイは、身体疾患の発症に先立つ生活上の重要な出来事について、結婚生活の適応に要した負担や時間を50点として、ストレス度を数値化しています。一見喜ばしいような出来事でも、とりわけいくつかの出来事が重なった場合には、思いがけず緊張度の高い状況に陥ることが明らかにされています。大人でもそうなのですから、子どもにとってはなおさらでしょう。

とりわけ、入園や入学など子どもにとっての環境移行体験に着目した時、ストレスや緊張の高まりを示す反応や行動がみられることがあります。たとえば、食欲がなくなるなどの身体反応、指しゃぶりや爪かみ、夜尿などが再開したり強まったりすることもあります。親への依存が高まったり、きょうだいや友達に意地悪をしたり、という行動がみられる場合があるかもしれません。入園や入学だけではなく、学年があがったり、きょうだいができたりすることも、ひとつの環境移行と考えられます。環境の変化はもとより、年長者としての振る舞いを期待されることが、子どもに環境の移行・変化として経験されるのでしょう。

もちろんこうした環境移行を通じて、成長が促されることも多々あります。むしろそうした出来事を経験するなかで、子どもの世界が広がり、身体面・精神面・社会面・認知面と、様々な発達が促されるのだといえます。今一度、環境移行に伴う子どもの状況をよく観察してみてください。子どもにとってプラスとなるような環境移行が望まれるところです。