女性ライフサイクル研究所 News Letter

2007年12月発行第70号

モラル・ハラスメントって、なに?

下地 久美子

 モラル・ハラスメントとは、言葉や態度によって、巧妙に人の心を傷つける精神的な暴力を意味します。最近では、テレビや雑誌などで、目にすることも増えてきました。モラル・ハラスメントは、夫婦、家族、会社、学校など、社会の様々な場所で、おこなわれています。加害者は、悪意のあるほのめかしをしたり、嘘をついたり、侮辱するといった方法を使って、相手を巧みに攻撃します。ひとつひとつは小さくても、それが一定期間、繰り返しおこなわれると、精神を破壊してしまうこともある恐ろしいものです。

 このモラル・ハラスメントには、二つの段階があります。まず最初は〈支配の段階〉で、加害者が被害者を惹きつけることから始まります。それがうまくいくと、次は相手が自分から離れなくなるように少しずつ影響を与え、被害者の考えや行動をコントロールしていきます。そして、被害者が、少しでも反抗しようとすると、加害者の心に憎しみが表れ、〈暴力の段階〉へと進み、嫌味や皮肉、中傷や悪口によって、被害者を徹底的にいためつけます。それも、怒り口調というよりも、冷静に述べられることが多く、被害者は、自分に非があるのではないかと思わされてしまうことがしばしばあります。また、身体的暴力と違い、傷が目に見えないため、なかなか周りに理解してもらえず、一人で抱えてしまうこともあるようです。
 
 モラル・ハラスメントの加害者は、自己愛が強く、自分は特別な存在で、自分のためなら誰でも喜んで尽くしてくれるべきであると思っています。そして、他者への共感性に乏しく、相手が苦しんでいても同情を感じることはありません。悪いのは、すべて相手で、自分を省みることはほとんどないと言われています。
 もし、モラル・ハラスメントに気づいたら、自分が我慢して相手の機嫌を取ろうとしないことです。身動きのできない状態から抜け出し、相手との接触を断つ以外に、この暴力から逃れる方法はありません。ただ、それには、かなりのエネルギーがいります。カウンセリングでは、相談者の方が、この戦いをやり抜くお手伝いができればと思っています。

参考文献
マリー=フランス・イルゴイエンヌ『モラル・ハラスメント』紀伊国屋書店