女性ライフサイクル研究所 News Letter

2007年12月発行第70号

セクシャル・ハラスメント

津村 薫

 このテーマで企業研修に行くと、「いちいちそれを言ってたら、職場がギスギスしてくる」「それならもう話さない方がましかなって気になる」という反応がよくある。なぜか、セクハラを問題にすることが、人間関係を悪くすることだと思い込む人は少なくない。単なる冗談、コミュニケーションだと言う人がいる一方、被害者は「暴力」だと感じている。この温度差に気づき、改めて考え直してみることが大事なのだろう。セクハラを言い立てること自体がみっともないと被害者が責められる風潮は今なお根強いが、組織としては勿論、個人としても、決して看過していい問題ではない。

 セクシャル・ハラスメントが問題なのは、力関係が背景にあることだ。職場の上司でなければ、気の進まない誘いも断われるものを、仕事にかこつけて呼び出される。行ってみれば口説かれ、NOを言えない事態に追い込まれる。勇気を振り絞って断われば、仕事上の嫌がらせが始まるなど、性的要求の服従や拒否によって雇用上の扱いが変えられるなどということが起こっているのだ(対価型セクハラ)。また、「貴方にスキがあったのでは」と落ち度まで問われることも少なくない。

 「立場が上だからといって、何をするんだろうと思った。家庭の外だからこそできる行為で、VTRでも撮って、奥さんに見せてやりたいと思った」とは被害者の声だ。円満なコミュニケーションには程遠い現実が浮かび上がってくる言葉だと思う。セクシャル・ハラスメントが起きない職場は、モラルも高く、生産性も向上するという良い面がある。風通しが良い職場というのは、セクシャル・ハラスメントを見逃さない、誠実に対処していこうとする姿勢が明確なのだ。相手の感情へ配慮ができるなら、セクハラなどの人権侵害は起こりにくい。また、それができなければ、良いコミュニケーションはそもそも成り立たないのだと、私たちが認識を改めていく必要があるだろう。

参考文献
 金子雅臣 『管理職のためのセクハラ講座―あなたの理解で大丈夫ですか―』 ぎょうせい
 日本経営者団体連盟 『セクハラ防止ガイドブック』日経連出版部