女性ライフサイクル研究所 News Letter

2007年11月発行第69号

楽しく子育て

小田 裕子

 「子どもは可愛く、子育ては楽しい!!」誰もがそう思いたい。しかし、育児ストレス、育児不安‥など現代社会での子育てはネガティブな面も多い。子育てが始まると同時にぶつかる難関に、生活スタイルの変化がある。身軽に思うように動いていた自分中心の生活から、子ども中心の生活に振り回されることへの戸惑い。また、子育て中心の生活に意味や価値を見出せず、日常生活や自分の存在が無意味に思えてくるような、従来の価値観や考え方の行き詰まりがある。このように、今までの社会生活と子育ての間にしんどさが生じるのはなぜだろうか?それは、現代社会は人を育むには不向きな原理で動いているということではないだろうか?

 子育てには沢山の要因が盛り込まれ、多くの力を必要とする。中でも社会の在りようは大きな影響を及ぼすように思う。資本主義社会が生み出す利益追求や損得勘定、他者比較を生み出す価値観、利己主義による自分中心の生活スタイル、マニュアルやスケジュール通りに全てを動かそうとする発想‥これらは考えなしに、私たちの価値観や生活スタイルに浸透している。こうした社会的背景を見直すことなく子育ての行き詰まりは解消できないように思う。子育ての行き詰まりを個人の問題にしてしまう風潮は、親の自己嫌悪や自信喪失、子どもを可愛く思えない悪循環に封じ込めてしまう危険性がある。子育てを楽しむためには、まずは私たちの意識をつくっている社会の在りようと子育ての矛盾に気づき、自分を責めないこと。そして、子育てを機に今までの生活スタイル、価値観や考え方を見直し、人を育む生活や価値観にシフトチェンジしていくことではないだろうか。

 一方、個人的な要因として、変化に伴う痛みや悲しみに気づいておくことも必要である。産前産後の心身の変化は本人にしかわかりにくく、憂鬱やしんどさをもたらす。また、今までの活動や評価、自己実現の場を失う悲しみ、幼い頃からの傷つき等が癒されなければ、子どもに向かうはずのエネルギーは、自らを慰めるために費やされてしまう。痛みや悲しみが放置されたままでは子どもを可愛く思うことは難しい。自分の痛みや悲しみに気づき、サポートを求めてケアすることで、初めて子どもへと愛情が流れていくものだろう。また、子育て中は外出がままならず、母子が孤立しがちである。専門家から隣人まで使える社会資源は有効に活用し、子どもを介することで新たにつながる人たちとの出会いを大事にしたいものだ。おっぱいマッサージなんかは、授乳期にしか経験出来ない出会いだし、子育てカウンセリングを受けてみると、目の前が開けてきたという声も聞く。最近は子連れでフレンチコースを食べられる店なんかもある。今だから繋がれる人や場所と繋がって、心の休息も欠かさずにしていきたいものだ。