女性ライフサイクル研究所 News Letter

2007年9月発行第67号

生き延びる力、伸びていく力

窪田 容子

 日々の暮らしの中には、嬉しいこと、楽しいことばかりがあるわけではない。人生は、悲しいこと、落ち込むこと、腹の立つこと、悔しいこともたくさんくれる。へこんだり、思いきり泣いたり、怒ったり、悔しがったり・・・そして、また人の優しさに出会って気持ちがほころんだり、誰かから何かから元気をもらったり、ささやかな幸せを感じたり。そんないろいろな感情を味わえるから、私たちは生きている実感、躍動感を得ることができる。

 子ども時代に虐待的な環境で過ごしたり、ひどくつらい体験をすると、人は感情を切り捨てる。恐怖、悲しみ、寂しさ・・・そんな感情をまともに感じていたら、つらすぎて生きていけないからだ。心が壊れないように、心を守るために、そういう力が働く。それは生き延びるための素晴らしい力だ。だけど、心は恐怖や悲しみだけを切り離すことは難しい。恐怖や悲しみと一緒に、喜び、楽しさという感情も封じ込められてしまうことがある。そうなってしまうと、生きている実感がわかなかったり、自分が自分でないように感じられてしまい、人生を積極的に生きられなくなる。

 そんな人たちが、少しずつ、安全な場でつらかった過去と向き合い、自分が悪かったのではないと気づいていく。苦痛を伴う感情を受け止め、柔らかな感情を取り戻していく。その中でも精一杯生きてきた自分に気づき、肯定し、慈しんでいく。その力は、本当に素晴らしい。踏まれてもまた立ち上がり生き延びていく植物のように、植物が太陽に向かって伸びていくように、どんな人にも、生き延びる力、回復しようとする力、伸びていこうとする力があるのだと思う。