ニュースレター No.58 / 2006年5月

ご 挨 拶

女性ライフサイクル研究所所長 村本邦子

 研究所を会社にしてから、あっという間に4年が過ぎました。気がつけば、新しく迎えたスタッフたちも少しずつ成長し、頼もしく感じられる今日この頃です。最近、組織に関わる仕事が増え、経営学やキャリア開発に関心が向いていますが、興味深いデータに出会いました。それは、学校を卒業して最初の上司との出会いが、25年後の働き方、仕事や社会に対する姿勢や価値観に大きな影響を与えるというものです。自分自身は、さまざまな人たちに支えられてはきたものの、基本的には独立開業の形で働いてきたため、残念ながら、上司と呼べる人との出会いはありません。

 現在、女性ライフサイクル研究所設立当初からの相談内容の集計・分類を行っています。十数年も昔の記録と向き合いながら、さまざまな感情を経験しました。いつも一生懸命やってきたつもりではありますが、それでも、日本社会がトラウマの問題を何も認識していなかった時代、知識や情報は絶対的に不足していましたし、教え導いてくれる人もなく、試行錯誤の連続で、十分に役に立てなかったのではないか、間違ったこともしてきたのではないかと苦い思いにさいなまれます。つねに自分自身も無理をしていた状態でした。尊敬できる上司がいてくれたらどんなにかありがたかったろうと思うと、なんだか涙が出る思いでした。それはちょうど、親の愛情に恵まれなかった子どもたちが、本当は得たかったのに得られなかった喪失を悼む作業に近いものかもしれません。

 それでも、いろんなところで、いろんな人々に応援してもらいながら、ここまでやってくることができました。仕事が人を育てると言いますが、本当に、私も、仕事を通じて、社会に育ててもらったなあというのが実感です。自分が欲しかったのに得られなかったものは、喪失を悼みながら、後輩へと受け渡していくことができたらよいのでしょう。若い人たちが成長し、さらに、次の世代へと思いをつなげていってもらえたらと願っています。そして、私自身も、目先の事象に迷わされることなく、しっかり着実に歩んで行くことができたら、そして、もっと成熟していけたらいいなと思います。