ニュースレター No.53 / 2005年2月

「不妊症」ってご存じですか?

 不妊とは、日本産科婦人科学会用語委員会によれば、「生殖年齢の男女が妊娠を希望し、ある一定期間、性生活を行っているにもかかわらず、妊娠の成立をみない状態(単一の疾患ではない)」と定義されています。不妊の原因としては、大きくは、不妊原因が夫婦のいずれにあるか、という見方ができます。女性側の要因としては、排卵障害、卵管因子、子宮因子、子宮頚管因子などが、そして、男性側の要因としては、精巣での造精機能障害、精子輸送路通過障害、精嚢や前立腺等の副性器障害、射精障害などがあります。男女双方に原因がある場合もあります。また、一般スクリーニング検査では異常を認めないものもあり、それは機能性不妊症と言われています。

 男女の生殖機能に何ら問題がない状態を想定すれば、卵子と精子が1回の機会でタイミングよく出会って受精し、子宮内に着床し、妊娠が成立する確率は30%であるとされています。この確立に基づくと、100組の夫婦のうち30組が結婚してからの最初の1カ月で妊娠し、残り70組のうち30%の21組が次の周期に妊娠し、2周期では累計51組が妊娠します。累計していくと、1年間で99組が妊娠するとされています。

 しかし、体調によってはホルモンのバランスが崩れ、生殖関連諸器官が普段通りに働かないことも当然あります。そもそも受精卵が子宮に着床するに至る迄には長い道のりがあり、計算通りに妊娠が成立するとは限りません。さらには、たとえ妊娠したとしても、それが必ずしも出産に結びつくわけではなく、芽生えた命を失うという悲しみを経験する人もいます。なかには、妊娠と流産を繰り返し、お腹の中で赤ちゃんを育てることができない、赤ちゃんを守ってあげることができなかったと、自責の念に苛まれる人もいるのです。また、子どもを産んで一人前という周囲の何気ない言葉に傷つき、子どもを産み育てることができない自分は女性として価値がないと思い詰めてしまう人も多く存在するでしょう。子どもは2人いて当然とする認識に過度な負担を感じ、2人目の子どもができないことによって悩みを抱えている人もいます。

 日本では、女性は結婚したら子どもを産んで当然だとする認識が一般的であると言えるでしょう。しかしそもそも、子どもをもつ/もたないということを含めて、家族像や将来展望はそれぞれの夫婦によって多様であると言えます。実際、不妊であることに悩むプロセスを通じて、仕事や趣味など自分達の人生と治療を継続する生活とを摺り合わせて考え、子どものいない生活を選択する夫婦もいます。また、子どもが産むことができなくてもせめて育てたいと思い、養子縁組を選択する夫婦もいます。子どもを産むことができないということで、肩身の狭い思いをしないような社会であればと思います。

■なお、当研究所では、5月より月1回「子どもができないことに悩む女性のグループ」を開催します。

(安田 裕子)