スタッフエッセイ 2013年11月

富士山、家族旅行

安田裕子

先日、富士山に行ってきた。飼い犬・元気も一緒に旅行できるように、ワンちゃんが泊まれるペンションを探し、関東に住む弟家族を山梨県の大月駅でピックアップしての、ドライブ旅行。今からおよそ1万年前に、現在の美しい自然景観がつくられたといわれている、標高3,776mと日本一の高さを誇る、富士山を眺める旅。山梨県側の富士山麓に位置する富士五湖、本栖湖、精進湖、西湖、河口湖、山中湖のなかでも、湖面の標高が最も高い位置にあるという、山中湖近くの素敵なペンションに泊まった。

動物好きなオーナー夫婦、ペンションでは、ワンちゃんを2匹、ネコちゃんを1匹、育てているとのこと。ペンション内には、ワンちゃんとその飼い主家族が交流することのできる部屋が設けられていて、そこで、大きな2匹のワンちゃんと、小さなネコちゃんに、ご対面。部屋に入るやいなや、人懐っこいワンちゃんの大歓迎を受けて、ベロンと顔を舐められた姪っ子は、おっかなびっくりの様子ながらも、キャッキャと声をあげ、楽しそうな表情。一方、3キロほどの小さな身体の元気は、大きな身体のワンちゃんたちに圧倒されてタジタジの様子で、興味をもって近づいてくる2匹のワンちゃんから逃げようとする。結果として、尻込みしながら離れようとする元気を先頭に、3匹のワンちゃんが列をなしてスタスタ行進しているような構図になり、それがなんともおかしかった。このあたりには、ペット同伴可能の施設が比較的多く、宿泊先のペンションはもとより、河口湖畔のロープウェイ、山中湖の遊覧船、トマトのタンシチューからクリームの牡蠣シチューまでメニュー豊かなシチュー屋さん、大好きなかぼちゃのタルトもばっちりショーケースに並ぶ、タルトの美味しい可愛らしいカフェ、などなど、いろんな場所で、いろんなことを、元気をまじえ、姪っ子家族と一緒に楽しむことができた。

世界文化遺産に登録された富士山は、紅葉の秋、天候にも恵まれ、現地に向かう高速道路から、太宰治の『かちかち山』の舞台になっているカチカチ山ロープウェイにのって向かった河口湖畔天上山公園から、山中湖畔の遊覧船・白鳥の湖号から、山中湖や河口湖の湖畔をめぐる自動車のなかからと、さまざまな雄姿を眺めることができた。富士山好きの母親は、大層ご満悦の様子。東海道新幹線の窓越しに遠く見える富士山もよいが、間近に眺める、広い裾野を含めて捉えられる迫力ある富士山は、想像をはるかに超える感動をもたらしてくれた。富士山頂から太陽が昇る瞬間と夕日が沈む瞬間に、まるでダイヤモンドが輝くような光景が見られることがあるという、その名も「ダイヤモンド富士」。富士山が東か西の方向に見える場所で、年に2回、気象条件がよければ見られるというダイヤモンド富士には、ちょっとした雲のいたずらでお目見えすることができなかったものの、散りばめたダイヤモンドが輝くように、富士山の稜線が浮かび上がるその姿は、またなんともいえず素晴らしいものだった。

富士山を満喫しての帰路には、父親念願の、長野県松本市の松本城に立ち寄った。松本城は、姫路城、彦根城、犬山城とならんで、国宝に指定されているたった4つの城のひとつである。ふと、大学生のころ、友達同士で、青春18きっぷを使ってゴトゴトと鈍行列車に揺られて松本市までやってきたことが思い出される。あの時は、さらに新島々(しんしましま)駅を経由して、上高地に向かった。松本市内で買い込んだ食材を持ち込み、陽も落ちてからやっと到着した上高地で、カレーをみんなで作り、とうとうご飯にありつける!と思いきや、スプーンがなくて往生した、なんていう、さまざまなエピソードとその時の情景を、鮮やかに思い出しながら。今回は、上高地には立ち寄らず、2度目の松本城を堪能し、美味しいお蕎麦を食して、家路についた。

元気と、姪っ子家族と一緒に、濃密な時空間を過ごすことができた、ひさびさの家族旅行。これまで知り得なかった富士山の美しい顔に、雄姿に、多数出会うことができた。一富士二鷹三茄子(いちふじにたかさんなすび)と、初夢に見ると縁起がよいことで知られている富士山を、みんなで共有した家族旅行。引き続き、なんかいいことありそうな。


(2013年11月)