スタッフエッセイ 2013年4月

カウアイ

村本邦子

春休み、カウアイ島に行った。カウアイはハワイ諸島の一番北にある東京とか大阪くらいの大きさの丸い島。海底火山によって生まれ豊富な雨に恵まれて、自然による創造の奇跡を思わせる島だ。

圧巻はワイメア渓谷。かなり頼りないドライバーではあるが、ひょんなことからジープを借りることになり(もともと日産を予約していたが、レンタカー会社の人に「同じ値段で大きなジープを使ってもいいよ」とあたかも良いことのように勧められて、つい乗ってしまったが、結構、古そうなジープで、本当のところお得な選択だったかどうかは疑問・・・)、行きはサトウキビ畑や牧場が広がるコケアロードを上り、帰りは渓谷の拡がるワイメイア・キャニオン・ドライブを下る。1000メートルほどの標高。登っていくにつれて、世界はドラマチックに変わっていく。中間点にあるワイメイア渓谷の展望台から見える光景は筆舌に尽くしがたく、私の力では描写することができないのだけれど、ちょうどグランドキャニオンの立体が間近に迫る状況を想像してもらうといい。

そこから先は、だんだんと雲の中に入っていくような感じだ。霧が立ち昇り、カーブを曲がると、突然、晴れる・・・といったことが繰り返される。途中、三か所ほどの展望台に立ち寄りながら北上し(ずっと登っていくというよりは、平坦に広がるてっぺんを移動していく感じ)、終点のプウ・オ・キラ展望台につくと、絶壁の片側にナ・パリ・コーストの海岸線が見える。海抜1,400メートルから真下が見えるので相当に迫力があって、正直言うと怖い。もう一方には幻の湿原、ワイメア渓谷が広がる。深い深い森だ。トレッキングコースがいくらかあって、挑戦したいところだけれど、暗くなる前に山を下りないと運転に自信がないので、少しだけ湿原に入って引き返す。

キャニオン・ドライブをワイメイアの街に向かって下っていくと、遠く海の向こうにニイハウ島が見える。この島の話がおもしろく、スコットランド出身のエリザベスさんが、「自分たちだけの島」を持ちたいという亡き夫の夢を果たすべく、1864年に、カメハメハ大王から1万ドルとピアノ一台で、島の住民300人つきで島を売ってもらったのだという。現在はロビンソンさん一家が所有している。島ではお金が不要で、150人ほどの島人たちは、ロビンソン家から支給される生活必需品を使っているそうだ。島の文化をそのままにするため、ロビンソン家は島を部外者立ち入り禁止にしていたが、1986年にヘリコプターツアー(ヘリコプターはもともと島の救急用のもの)を始めた。きっと、島の維持にお金がかかるのだろう。最初は、「1万ドルとピアノで島が買えたなんていいな〜」と思ったけれど、よく考えてみると、住民つきで島を買うというのが何を意味するのかは謎である。

もうひとつおもしろかったのは、「カウアイ・メイド」というプログラムで、カウアイ産の材料を使い、カウアイの人々によって、カウアイでつくられている製品の製造業者と小売店で成り立つ。小さな個人商店がカウアイ・メイドのものを手作りして、公認ロゴを使用するのだが、カウアイ・グラノーラ、カウアイ・ソルト、カウアイ・チョコ・・・など、お店に行くと、エプロンをつけてカウアイ・メイドを手作りしているおばちゃんたちが手をとめて売ってくれる。安くはないが、かなり上質だ。カウアイ・グラノーラはとくに気に入って、朝ごはんに食べ、おみやげにも買ってきた。ハワイみやげによくあるマカデミアンナッツ・チョコもあったが、量産のものと比べ、格段においしい。今となっては、もっと買ってきたらよかったと後悔している。

そしてもちろん、あちこちのビーチのすばらしさ。寝そべってのんびり過ごすには明るく暖かい太陽のふり注ぐポイプビーチが一番で、海を見ながら散歩するには、ロマンチックなノースショアだ。泳ぐにはちょっと寒く(外人たちは泳いでいるけど)、結局ダイビングはしなかったけど、生まれて初めて波乗りをしてみたいと思った。いつかまた行けるといいな。 

(2013年4月)