スタッフエッセイ 2013年3月

工場見学ブーム

下地久美子

夫から、「仕事でビール工場に行かないといけないから、一緒に行ってくへん?」と誘われた。確かに、中年のオジサンが1人でビール工場へ見学に行ったりすると、かなり怪しい人に見えるだろうと思い、付き合うことにした。サントリー京都ビール工場に行ったのだが、予想外に見学者が多く、2台の送迎バスは満杯。家族連れや若い男女のグループや中高年カップルなど、さまざまな顔ぶれがあった。

ここ最近、工場見学がブームなのだそうだ。テレビでも、「超潜入リアルスコープ」など工場見学の番組がゴールデンタイムに放送されていたりする。日ごろ何気なく食べたり使ったりしている製品がどのようにして造られているかということに関心が集まっているのだろう。日本経済新聞によると、数年前に産地や原材料を偽って販売する偽装問題が相次いだため、企業は製造現場を公開することで、消費者に安心感を与え、信頼を得ることに苦心しているという。

さて、サントリーのビール工場。映画に出てくるような未来の研究所という雰囲気のなかで、映像を駆使して、ビールの製造過程を見せてくれる。ただ面白味に欠けるのは、ガラスの向こうに延々と続く直径50センチほどのビールの管(パイプ)が見えるぐらいで、あっと驚くような仕掛けがないこと。これがお菓子工場であれば、次々と焼きあがってくるクッキーに、チョコレートがコーティングされるプロセスやパッケージされていく様子が、おぉ〜!と感動的なのだが・・・。製造されたビールの缶が次々に流れてきてもなぁ〜。

最後のお楽しみは、作りたてのビールの試飲。制限時間20分で、グラス3杯までおかわりができる。1杯目は美味しいが、さすがに2杯しか飲めなかった。フロアから見える庭に目をやると、ちょうど桜がほころび始め、のどかな春のひとときであった。帰りに、お土産のプレミアムモルツのグラスまでもらって、かなりお得だった。

ほとんどの会社の工場見学は無料で、しかもお土産付きという。景気の低迷が続く中、近場でお手軽なレジャーということで、人気が集まっているらしい。見学の受け入れをしている工場では、どこもすぐに予約で埋まってしまうのだそうだ。

10年以上前だが、製造工場に取材に行って、そのレポートを書くアルバイトをしていたことがある。なので、実はけっこう色んな工場に行っている。お菓子工場や清酒工場、牛乳工場などなど。遠い昔で、今では作りたての製品は美味しかったという印象しか残っていないが、工場で働く人がいて、モノは造られ、豊かな生活がもたらされているのだということ、そういうカラクリを知ることは、ちょっとプラスになった。

意外と知らないことを発見できる工場見学。家族や友だちを誘って出かけてみると、遠足気分で楽しいかも・・・。

 

(2013年3月)