スタッフエッセイ 2013年2月

編み物をしながら・・・

村本邦子

今年の冬は、久しぶりに編み物をしている。何があっても睡眠時間を確保する主義の私だが、やり始めたらおもしろくてつい睡眠時間を削ってやってしまうというのが編み物で、だからこそ、忙しくなった最近は手を出さないようにしてきた。そうでないと、体が持たないから。

一番多いときは、ひと冬で十枚ものセーターを編んでプレゼントしまくっていたこともある(基本的に人のものを編みたいのだ)。一時は編み物作家になろうかな・・・なんて思いついて、自分でデザインしたセーターを写真に撮りためて、編み物関係の出版社に送ろうとしていたこともある。子どもたちが小さい頃は、クリスマスツリーやら、もこもこのクマちゃんやらを編みこんだセーターを作ったり、家族お揃いのセーターを編んだりした。娘が少し大きくなると、娘がデザインして私が仕立てるというちょっとすごいこともやっていた。最高傑作は、背中に天使の羽を編みこんだブルーのジャケット。

今年は、のんびりした気持ちで、少しずつ編もうと決意して、ちょっと複雑な模様のものを、時々間違えては、ほどいてやり直したりしながら、本当にボツボツと少しずつ編んでいる。そして、「なんだ、やればできるじゃないの!?」と、いつの間にか「ほどほどにする」ことを覚えた自分の成長に驚いてもいる。いつも持ち歩いて、電車の待ち時間の5分とか、たまたま座れた電車やバスで少しずつ編んでいるが、それでも少しずつ出来上がっていく。

昔は、電車で編み物をしている人がもっといたものだが(そしてほんの一時期だったが、編み物をしないでくださいと放送が流れたこともあった)、今はほとんどなく、一か月ほどで一人見かけたのみ。そして、一人だけが「私も編み物好きでね〜」と話しかけてきた。なにせ、下手すると、手編みの方がずっと高くつく時代だ。ひそかに編み物好きの連帯感も生まれる。

私にとって、編み物をすることは瞑想に近く、心を落ち着け、自分のなかにエネルギーをためていく効果がある。ひと仕事終えたら、次の仕事にとりかかる前に、少しの間、編み物をすると気持ちが穏やかになることも発見した。そして、結果的にセーターが出来上がるというモノづくりの楽しみもある。いろんな色の毛糸を見ているだけで、ハッピーな気分になれるし、編んだものを着てもらうと、やっぱりちょっと嬉しい。

やるかやらないかの二者択一でなく、ぼつぼつやるという姿勢を、この機会に人生にも取り入れたいものだ。なんでもかんでも一生懸命やりすぎるのが私の弱点。年齢とともに、細く長く続けていくということを覚えよう。編み物をしながら、柔らかな気持ちで年を取っていきたいものだ。

(2013年2月)