スタッフエッセイ 2013年2月

カキが美味しい!

桑田道子

子どもの頃にカキフライを食べて「なんだこれは?」と思って以来、長く苦手なもののひとつになっていた。牡蠣にあたったという話もちらほら聞くようになると(他の食べ物話に比べてあまりにも「牡蠣にあたる」というエピソードは多くないか?)、さらに近寄らないでおこう、という気持ちになり、食事先で同席者やお店の人にすすめられるようなことがあっても「ちょっと苦手で…」というとほぼ100%、相手も「あぁ」と納得するような顔をされるので、そのまま遠ざかっていた。

それが、パリに短期留学していたときのこと。ステイ先は「娘と同年代の子なら皆が楽しく過ごせるだろう」と受け入れを始めた家庭だったので、私が滞在していたときにはほぼ同じ年のフランス人、ドイツ人、アメリカ人の女の子がいた。そのため朝晩の食事はいつも「野菜たっぷり、肉魚チーズ少々、炭水化物が少な目にフルーツたっぷり」、時には私がいるから、と鍋で米を炊いてくれたり(他の女の子達は米をサラダにして食べる)、かなり私達好みのものだった。が、たった数か月のことなのに、だんだんと生魚、お刺身が食べたい!となってきた。魚といえば、主に白身が焼かれ、オリーブオイルとハーブ、塩コショウか、クリームなどのソースがかかっているか、なので、「生を醤油で!」欲求が募る。

そこで、市場へ行くと(スーパーの海鮮は冷凍か加工品が多く、日本よりも市場がまだそこかしこにたくさんある)、店先の氷の上には直接魚がワサワサ載せられており、私に目利きの技術はないのでいろいろ聞いて確かめないといけないが、新鮮な魚を安く手に入れることができた。日本では大人気の大トロあたりはパリでは捨てられることも多いため、お店によってはただでわけてくれたり、その場でスプーンで食べさせてくれて買って帰るまでもなく大満足というようなこともあった。

そして、市場で大人気なのは魚よりも牡蠣だった!魚が欲しくて店の人に話しかけると、すぐに味見させようと殻についた牡蠣を渡してくれる。食べられないと断ると「こんなにおいしいのに!もったいない!この美味さがわからないのはバカだね〜」と返される(笑)

確かにパリは牡蠣専門店やシーフードレストランも多く、牡蠣だけでなく、ムール貝を一人でバケツ一杯食べていたりするので、みんな好きなのだろう。あまりにたびたびもったいながられるので、一念発起し、すすめてもらったら食べてみようと決めた。いつものように店先で、殻を割った生ガキにレモンをかけただけのものを渡され・・・・あれ?おいしい。チュルンと口に入れたら、うっすらしょっぱさと一緒に潮の香りでいっぱいになる。これはいける、とあっという間によく冷えた白ワインと牡蠣は私のお気に入りの組み合わせになった。

日本でも普通に牡蠣を食べるようになったが、だんだんわかってきたのは、パリで食べた物は、冬の時期だったが、日本では夏に食べるような岩牡蠣に似ていて、身がしまっているものが多かったこと。日本も獲れる地域によって牡蠣の種類もずいぶんと異なり、冬には、もっと身がふっくらとしたもの、甘いものがたくさん流通していること。カキフライやお鍋にいれる牡蠣はいまだに少々苦手なこと。広島や宮城の牡蠣が有名で確かおいしいが、大阪に住む私が最も手軽に好みのタイプの新鮮な牡蠣を手に入れたければ、三重の鳥羽駅周辺で殻つきの牡蠣(的矢かきなど)を買うのが一番だ、ということ。そして、かなり日本の安全基準は外国に比べ厳しいことも。

大きな殻つきの牡蠣が10個ほど入って約1000円。身の入っているふくらんだ方を下にして魚焼きグリルに入れ、焼くだけ!焼きすぎると身がしょぼくなってしまうので、軽く焼いて、ふっくらしたものにレモンをしぼって食べるのが最高!オイスターバーで食べるおしゃれな「牡蠣のカクテル」もいいが、私はレモンだけでOK。「牡蠣を食べるならRの月」は有名だが場所によっては1・2月が旬のものや夏牡蠣もある。牡蠣はビタミン、ミネラル、タウリンも多く、良質なたんぱく質。エネルギー源となるグリコーゲン(ポッキーやビスコで有名なグリコの創業は、牡蠣のグリコーゲンとの出会いからとのこと)も多く含まれている。おいしく牡蠣をいただいて、冬の寒さもふっとばして元気にいこう!

(2013年2月)