スタッフエッセイ 2013年1月

初笑い

下地久美子

年末に、初めて天満天神繁昌亭へ、落語を観にいってきた。数年前から夫が落語にハマっていて、仕事仲間と落語友の会のようなものを結成して、しょっちゅう繁昌亭へ通っているので、「ほんまにそんなに面白いものなんやろか?」と半信半疑でついていった。

落語は、全くの素人で、古典落語やら創作落語やら、江戸と上方の違いというのもわかっていないし、笑福亭とか、桂とか、林家とか、三遊亭とかが、どういう位置づけなのかというのも知らない。テレビで、チラッと落語を観たことはあるが、はっきり言って、どこが面白いのかわからないと思っていた。

繁昌亭は、こじんまりしていて舞台と客席の距離も近く、天井からたくさんの提灯がぶら下がり、江戸時代の寄席といったような趣きがあり、否が応にも期待が高まる。夫とその仲間がイチオシの笑福亭福笑による『年忘れ、福笑とスーパーイリュージョン』という公演に行ったが、大阪では熱狂的な人気を誇る落語家さんらしく、客席は1階も2階も満席。落語に行くのは、お年寄りばかりかと思っていたら、意外と若い人の姿もちらほらあり、落語ブームというのは本当だった。

最初の演目は、笑福亭智之介の「牛ほめ」というもので、これがいわゆる古典落語というものなのだろうが、まあまあやねという印象だった。しかし、あそこまで完璧にセリフを叩き込むというのは大変だろうし、身一つで何役も演じ分けて笑いを取るというのはさすがにプロフェッショナルだ。

続いて登場した笑福亭たまは、京大卒の落語家というのが売りのようで、そう言えば端正で賢そうな顔をしている。その時の出し物は、ジョニー・デップのあの有名な「シザーハンズ」のストーリーを面白おかしく伝えるというもので、こう説明してもちっとも面白そうでもないが、「こんな落語もありなんや」と衝撃的だった。観客も「ようけ笑って元取らな」とばかりに爆笑の嵐。合間に、スーパーというよりはチープなイリュ—ジョンと手品がはさまって、最後のトリが、笑福亭福笑であった。

笑福亭福笑は、だみ声の愛嬌のあるおじさんで、2012年の世相をふり返るというものであったが、これがものすごく引き込まれる。台本があるんだろうけれど、思いつきでしゃべっているとしか見えないところが名人芸なんだろう。演じているという感じが全くなく、近所のオモロイおじさんが、ピリッと風刺を効かせながら笑わせてくれるというのが心地よく、お腹を抱えて大笑いした。伝統芸能とかそういう小難しいことは抜きで、ただ「面白いことが好きですねん」という人となりと「お客さんをとにかく楽しませまっせー」というサービス精神に、すっかり魅了された。

3時間ぐらいあったが、あっという間で、その後、近くの居酒屋へ場所を移動して、いい大人が「笑い」について、ああでもないこうでもないと真剣に語り合うのが、また楽しく、「今度また落語行きましょね」と堅く約束して、家路についた。

「笑い」に勝負を賭ける落語家たちの仕事ぶりを見て学んだことは、人生本気で楽しまな損やなということ。今年も面白いことをたくさん見つけて、いっぱい笑えるといいな〜。そして、周りの人へも、フワッと心が温かくなるようなものを伝えていきたい。

皆様にとっても、笑顔あふれる一年となりますように。今年もどうぞよろしくお願いします。

(2013年1月)