スタッフエッセイ 2012年11月

新語・流行語

桑田道子

今年の新語・流行語大賞の候補が50語発表されたニュースを見た。これらのノミネート50語から、大賞、トップテンが来月決定されるとのこと。

興味がわいたので、どんな言葉が選ばれているのかインターネットで検索してみると…、オリンピック関連が多く、その他ネット系の言葉や、今年各地で被害をもたらした異常気象関連。その他、例年のように政治・芸能・健康法関連が並んでいる。が、聞いたことのない言葉や、聞いたことはあるけれどどこで流行っているのか、使われているのかわからない言葉がいくつもあった。こんなふうにして、いわゆるトレンドから外れていくものなんだなと感じつつ。

そのなかで、そうなんだぁと目にとまった言葉が「イクジイ」。
どこで定義されているのか調べてみると、「父親であることを楽しもう」とパパの積極的な育児を推進する団体、ファザーリングジャパンで「イクジイプロジェクト」が紹介されていた。「イクバア」は聞いたことがないな、と少々ひっかかりをおぼえながらも、イクメンという言葉を拡げてこられた団体なので思いは理解できる。イクメンであることをポジティブに表現されているけれども、その背景にはもう一世代、二世代、上の方々からの揶揄や抵抗は経験されてきているだろうから。

というのも、
「いまどき、娘のパートナーには、家事育児に積極的な男性であってほしい。手伝うというより、主体的に一緒に家庭生活してほしい」
「息子が、嫁を手伝って家事育児しているのを見ると面白くない。ごはんのおかわりを自分でよそっていたり、食器洗いや洗濯物を干している姿を見ると情けなくて泣けてくる」
というようなダブルスタンダード(二重基準、二重標準)を私自身が、相談の場や多世代子育てをテーマに地域に出向いた折に実際に見聴きすることも度々あるからだ。

ファザーリングジャパンで紹介される「イクジイ」は、孫育てを楽しみながら、地域に積極的に関わり、社会貢献活動にも意識を向けたり、という思いが込められている。
定年後に何もすることがない…となってしまわずに、これまでの経験も活かしながら、老年期を過ごせるのは良いことかもしれない。その良さが生かされるのは、「年長者の言うことを聞け」という姿勢ではなく、「自分の時代と現代とは違ってきていることもあって当たり前」という姿勢が必須だとも思うが。孫にとっても、地域の子ども達にとっても、成長に関心をもって、あたたかく接してくれる大人が一人でも多く身近にいてくれることは嬉しいことだし、親にとっても頼もしい。

今夏には、広告代理店の電通が、関東1都6県で小学生以下の孫のいる男性800名を対象に調査(育G(イクジイ)調査)を行い、「『自分の楽しみ』として孫育てに日常的・自主的に関わる新しい祖父像」という結果を発表していたり、「イクジイ・オブ・ザ・イヤー2012」なる賞もあり、首相が「いずれ立派なイクジイに」とコメントしていたりもするようで、確かに盛り上がっていそうである。

毎年、毎年、新語・流行語がいくつも選ばれて、というのは、マスコミが強引に流行を作っていくようなコントロールも感じるし、その時々で流行りのものに飛びついて使い捨てていくような消費志向も生じるだろうし、となんとなく苦々しい思いがした一方、確かに、過去に選ばれた言葉を見てみると、それを見るだけで当時が思い出されるような、言葉に凝縮されたもの、時代の空気を感じる側面もある。

また、たとえばセクハラやDV、ストーカーなど、なんとなく事象は知っていたり、今、初めて生まれた現象ではなく昔からあることだけれども、その事象にピッタリな言葉が与えられたことによって周知が加速し、多くの人の理解が原動力となって対策を講じることが出来たようなこともあるだろう。

今の私にとっては1年というスパンはそれほど大きな変化のある年月ではないが、中・高・大という思春期含め子ども時代には、1年毎に、自分が出来ること、経験することが大きく広がり、「昨年と今では全然違う」という感覚を持っていたようにも思う。あの感覚で物を考えれば、身近な新語・流行語が年々変わることもそれほど違和感はないかもしれない。安定と変化と、そして成長…、と考えてみる新語・流行語であった。さて、今年は何が大賞に選ばれるのだろうか。

(2012年11月)