スタッフエッセイ 2012年9月

安全でサポーティブなコミュニティづくり〜相互信頼を実感して

西 順子

先週の土曜・日曜日の二日間、援助者向け講座「DV被害者のトラウマと回復〜女性と子どもの視点から考える」を開催したが、あっという間に一週間がたった。開催の一週間前から講座本番に向けて集中力が高まり覚醒度がアップ(ハード面とソフト面と両方の準備は初めて!)、当日はピークを迎え、終了後のこの一週間はこの体験を咀嚼し消化する時間だった。と同時に、次にどうつなげていけるかと新たなアイデアが浮かんだり、それを現実に照らし合わせたりして考える時間でもあった。

私にとって今回開催した講座は、「安全でサポーティブなコミュニティづくり」の一歩だった。生態学的視点からトラウマと回復を捉えると、トラウマを受けた人は「安全でサポーティブなコミュニテイ」に接近する必要がある(http://www.flcflc.com/study/article/article02/10_harvey.html)。昨年、年報21号の論文「女性や子どものトラウマとコミュニティ支援-個人臨床を超えて」をまとめたことで、自分のなかで「コミュニテイづくり」がより意識されるようになった。そして今年は「自分がいいと思ったこと、やりたいと思うことで、できることは何でも思うようにやってみよう」という意思があった。そして自分の考えに賛同しチームを組んでくれた仲間がいたことで、今回の講座が実現した。なので、私にとっては行動できたこと自体が嬉しいことなのだが、この二日間で経験したことはこれまでにないくらい心に響くエンパワメントの体験となった。それは何かと考えると、今回は講座開催の動機など、大事に思っていること、価値を置くことをストレートに伝えたわけだが、心をオープンにしているせいか、そこに入ってくるものはどれも新鮮で有難く感じられるものだった。

この体験をなんと言ったらよいだろう・・と思っていたところ、ふと読んだ昨年の年報21号のタイトル「コミュニティ・エンパワメント」がぴったりきた。コミュニティ・エンパワメントとは、コミュニテイやシステムなど「場」全体の力を引き出す、活性化することを意味する(村本、2011)。二日間の講座という一つの「場」に、参加している人々のもてる力が集まり、互いにそこから学びあい、互いにエンパワーされたこと、その相互作用が素晴らしくて刺激的だった。「場」に参加している人とは、参加者の皆様とお手伝いに参加してくれたスタッフ、主催者であり講師である私たちである。その場自体が、コミュニティ・エンパワメントだったかもしれない。

もともと私は、相互作用のなかで互いに変化、成長する双方向性の関係性がとても好きである。だからカウンセリングという仕事が好きであるが、講師という伝える仕事においても、「場」のなかで相互作用から生まれる変化や変容を感じられることは新鮮な感動であった。世の中に、こうして女性や子ども、人々に寄り添っていこうとしている方々がいるということ、真摯に学んでいこうという方々がおられることに、人やコミュニティへの信頼を感じさせていただいた。そして、信頼を寄せる気持ちをもつことで、これから私たちも頑張っていこう〜と未来へと向かう希望を感じた。

他にも、もっとこんなことも伝えたい、やってみたいと思いは色々湧いてくるが、それを現実化することを考えると現実の壁にぶつかる。何をするのにも資金、人、時間、場所・・が必要である。そこにはいつも限界がある。しかし、どれも十分にはないからこそ、また工夫も生まれるというものだ。できることはほんの小さな、ささやかなことかもしれない。でも小さな第一歩からでもスタートすると、また次につながっていくと、今回の講座を経験して実感した。できれば思いつきではなく、長期的展望をもってつなげていきたい。

今日は本社で月一回の「女性のためのセルフケア・グループ」の日だった。継続して参加くださっている方から初めて参加くださった方まで、何がしか自分を大切にしてケアするヒントを持ち帰ってくださったのなら嬉しい。アンケートには、今後希望するグループやワークショップも書いてくださっていた。女性や子どもの声に耳を傾けると、そこにはさまざまなニーズがある。

一人でできることは限られているけれど、さらにスタッフの力も合わせていければいいな。「安全でサポーティブなコミュニティ」への架け橋となるように、コミュニテイに出向いていっての「場」づくり、研究所のなかでの「場」づくりと、小さな一歩を積み重ねていきたい。

(2012年9月)