スタッフエッセイ 2012年6月

講師雑感

津村 薫

女性ライフサイクル研究所で仕事をして、22年になる。

昨日、NPO法人FLC安心とつながりのコミュニティづくりネットワーク主催の「第14回グループ・ファシリテーター養成講座」を終えたところで、その余韻にひたりつつ、講師として感じるところを気ままに書いてみようと思う。

受講者はさまざまな視点を持たれ、こちらが意図していないことからも学ばれるのだなと驚かされることがある。昨日もそうだった。

「グループ・ファシリテーター養成講座」はグループ運営について学び、ファシリテートのスキルを身につけるというものだが、私たち運営する講師・スタッフたちの支え合いを見て、「あれがファシリテーターとコ・ファシリテーターなんだと感じた」などというフィードバックを受けて、「そう感じていただけたのか!」と思ったり。何のことはない、私のドジを後ろにいる仲間が手厚くサポートしてくれたということだが(赤面)。

振り返りのコマやアンケートで、さまざまなお声をいただいた。

「事前に申込用紙が送られてきて、その内容を見て、ここから講座は始まっているんだな、目標設定と振り返りをきっちり設けているプログラムが良かった」というお声があった。「時間厳守、内容とその量の入れ方も適切」というお声もあった。援助者が参加されるのだから、プログラムが優れているのか否かといったことも評価になるだろう。講師として、運営側として身が引き締まる思いだ。

先日、森浮ニ一緒に受け持った沖縄での保育士研修もそうだった。これも毎年お受けしている仕事だが、毎年、講師が元気をもらう。2日間に渡る終日研修を無事に終えることができ、良い運営のために尽力してくれた主催者側スタッフへの感謝はもちろん、熱心に参加して、この場を良いものにしてくれた参加者たちへの感謝の思いが強く湧き、彼女、彼らのこれからにエールを送りたい気持ちになる。

そうなると自然に深々と長いお辞儀をすることになるのだが、アンケートには、「そのお辞儀に感じ入った、その丁寧さを見習って仕事したいと思った」という言葉があり、「そこまで学びになったのか!」と思わず涙ぐんでしまった。

また、「お礼を言わなくちゃいけないのは私たちなのに。2日間ずっと立ちっぱなしで良い講義をしてくれたのは先生たちなのにと、先生たちのお辞儀に泣きそうになった」という言葉もあり、これにも「やられた」という感じ。これらは「イマドキの」とよく評される20歳そこそこの若者たちの言葉である。

優等生的な子たちだと、締めくくりに「いかがでしたか」とフィードバックを求めてみても、「今日、学んだことをこれからに活かしたいと思います」と無難な言葉でまとめてしまうことがある。

思わず「たとえば、どんなことが印象に残られましたか」と突っ込んで聞くと困惑されてしまうという場面を体験したことが過去にあるが、多くの若者たちはぎっしりと、感じたことを記述してくれる。

「早く園の子どもたちに会いたくなりました」「子どもたちのわくわくをふくらませてあげられるような保育士になまりす!」などというお言葉をいただき、時には「仕事を辞めようと思っていたけれど、もう一度頑張ってみようと思った」というお言葉までいただくことがある。頭が下がる思いだ。

その選択が良いものかどうか、私にはわからない。でも、どうせ仕事をするのなら、自分自身がとにかくやってみよう!という思いを持ち、何かに懸命に取り組もうとする姿勢を持てるのは良いことだろう。

良いことばかりが人生じゃない。その結果、生じるマイナスがあったとしても、そこをも引き受け、問題解決に取り組むというタフさもあわせて育てばいいなと祈るばかりだ。これは、女性ライフサイクル研究所で私が学んだ、「粘り強く、希望を見失わず、誠実に丁寧に仕事に取り組む」ことなのだろうと思う。

私たちが「熱闘甲子園」と呼ぶのは、真夏の定例、子育て支援者のための2日間に渡る終日研修、「キッズ・サポーター・スキルアップ講座」だ。プログラムを練り、改良を重ね、もう7年目だ。

仲間たちとみっちりと取り組むので、終わったら会場の土を持って帰りたい気持ちになる(普通、研修会場に土はないし、笑)。この場でも、本当に多くの人たちの真摯な学びにこちらが元気をいただいたり、また頑張ろうという思いをいただいたりで、実は講師こそが教えられているのかもと思ったりする。

私たちが子育て支援、援助者支援に関わってきた、そのノウハウやスキルを手渡したい、スキルアッフとメンテナンスをして、これからも元気に良いお仕事をしてもらいたいという子育て支援者たちへの「エール」が「キッズ・サポーター・スキルアップ講座」なのだと思う。そのアンケート用紙は大切に運営した仲間たちと共有し、じっくりと話し合い、次への実施へとつなげている。2度、3度と参加してくださる方たちまでいらっしゃって、ありがたいやら、もったいないやらだが、繰り返し学び、自分自身を見つめ直そうとする姿勢には、私たちが感じ入り、敬意を表したい思いを持つ。

また、アンケートに書かれた「もっと〇〇だったら良かった」「〇〇でなくて残念だった」といったマイナスの評価についても、講師にとっては学びだし、課題だ。時間とエネルギーを割いてメッセージをいただけることを大切にして、次の仕事につなげたいと思っている。

初任、中堅、管理職と分かれた階層別研修をそれぞれにお受けすることも多いが、初任研修での「もっと上の人にも聞いてほしい」といった声には胸が痛む。話を聴けば、若者たちを育てる土壌のない中で仕事をしなければならない環境にいる子たちも多い。

それでも、2日間の研修に給与を出しながら参加させるということは、組織としては大変なことでもある。若者たちもまだ仕事が慣れない中、余裕もないだろうが、決して独りよがりな思いだけに陥ってはいけない。大丈夫ではない状況に見えるのに「大丈夫です」と心を開かない若者に悩む上司も多い。周囲からしなやかに学ぶ姿勢を持ってほしいと願うし、それを伝えるようにしている。

「帰ったら、こんな良い研修に出させてもらってありがとうございますと上司にお礼を言おうと思う」と言う若者は少なからずいる。そしてこういう気持ちを言葉にして伝えることが、やはり人間関係を良くするものだろうと思う。「先輩に、この研修だけは受けといた方がいいと言われて来た」というお声もある。人と人との繋がりの温かさを実感する。

また、中堅や管理職研修では、皆さんの日頃のご苦労がしのばれる思いをする。大変な中、組織を良いものにしようと頑張られ、お忙しい中、参加されるのだから、すごいことだと思う。

どの立場の人も苦しんでいる。では、それを好循環にシフトできる職場とは?システムを見ていくという視点が要るだろう。職場に持ち帰り、役立てられるものをどんなふうに具体的に、しかも魅力的に伝えられるか。講師としての課題だ。スキルアップとメンテナンスを心がけたいと思う。

これまでご縁のあった皆さまに感謝。そしてご健康とお幸せを祈る気持ちを添えて。

(2012年6月)