スタッフエッセイ 2012年5月

こころとからだのメンテナンス

下地久美子

春から、歯科医院に通っている。子どもの頃から歯が丈夫で、歯医者には全く縁がなかった。去年、家の隣に、おしゃれな美容院?という雰囲気の歯科医院ができて、歯石取りに行こうかどうか迷っていた。思えば、歯石を取ったのは、かれこれ20年ぐらい前。「歯石は歯周病の原因です」と盛んにCMで言われているけれど、虫歯でもないとなかなか歯医者に行こうとは思わない。

まず、夫が虫歯の治療に行き、「良かったよ〜」というので、思い切って行ってみた。すると、外から見る以上に、インテリアも凝っているし、そこここにさりげなくグリーンがあって、なんだかいい感じ。つんと消毒液のにおいがして金属音が鳴り響く、これまでの歯科医院のイメージとはずいぶん違っている。

完全個室制で、他の患者さんと鉢合わせしないのもいい。室内には、ゆったりとクラシックが流れていて、ちょっとしたサロンのよう。笑顔の素敵な歯科衛生士さんが、最初にインフォームドコンセントをしてくれる。図を見せながらの説明は、とっても上手でわかりやすい。

毎回、1時間ぐらいかけて、歯のクリーニングと歯石取りをやってくれる。その間、全身の力が抜けて、芯からリラックスできる。身を任せて、ぼんやり座っているということの心地よさ。ふぅ〜っと意識が遠くなって、寝てしまっているときもある。そして、至福のひとときは、あっという間に過ぎていく。
 終了後も、「今日は、ここまで終わりましたから、次は、この部分をやりますね」と、しっかりと説明してもらえるのがありがたい。

日ごろ時間に追われていて、1時間何もせずにぼぉ〜っと過ごすことがない。時々ふと、こんな風にせかせかと一生が終わってしまうのかなと空恐ろしい気持ちになることもある。「進め」ばかりじゃなく「止まる」ということも、本当はすごく大切なことなんだろうと思う。

ともするとアクセルばかりの日々だけど、意識的にブレーキを踏みながら、自分のこころとからだに良いことを取り入れていくようにしたい。

今、研究所で、第3日曜日に「セルフケアグループ」というのをおこなっている。アートセラピーとボディワークを組み合わせたもので、この時に感じるほんわりした心地良さが、なんだか歯科医院で歯の治療を受けているときの気分に似ている。

絵心がなくて、「幼稚園児が描いた絵のよう」といつも夫に笑われるのだが、下手は下手なりに絵を描いたり、色を塗ったりするって、楽しい〜と感じる。

無心に手を動かすことは、実は、すごくこころを動かしている。意識して呼吸するというのも、からだに目を向けることにつながっている。

忙しさにかまけて置き去りにされがちなこころとからだだけれど、息切れしないためにも、こまめなメンテナンスを忘れないように気をつけよう。

(2012年5月)