スタッフエッセイ 2011年11

かばん持ちジャンケン

窪田容子

中学3年生になって、友達と4人で、我が家の前で待ち合わせて登校するようになった息子。毎朝毎朝、かばん持ちのジャンケンをしては、「おっしゃー、勝ったぁ!」 「うゎ、だるー、テンション下がるわ」とひと盛り上がりして、登校して行く。ジャンケンに負ければかばんを4つ持つことになるが、教科書などはほとんど学校に置きっぱなしで、かばんにはお弁当ぐらいしか入ってないから、たいして重くはないらしい。

そんな姿を微笑ましく見ていた私。

4月頃は、体格の小さなS君がジャンケンに負けてカバン持ちになると、校門の立ち当番の先生にいじめと間違われて注意されることがあったようだ。日替わりでいろんな子がカバンを持って来ることを、先生達が分かってくれてからは、何も言われなくなったとのこと。

ところが、ある時、やはりS君がかばんを持っていた日に、通りがかりの人にいじめと間違われて「あんたら、何してんの!」と怒られたらしい。「ジャンケンなんです」と言ったけど、しばらく何か言われたとのこと。体格の小さな子がかばんを4つ持って、体格の大きな3人が、手ぶらでポケットに手を突っ込んで歩いている光景は、いじめに間違われても仕方がない。

つい最近は、通りがかりの人が中学校に電話をしてきたらしく、先生にかばん持ちは禁止と言い渡されたらしい。息子は、「一日だけ見て電話せんでも、数日見てくれたら、いじめやないって分かんのにな・・・」と言っていた。それでも、めげずにかばん持ちをして登校すると、校門で校長先生にかばんを取り上げられたとのこと。「もう校門の前ではやめとこ」とつぶやいていた。

無関心だったり、見て見ぬふりをして通り過ぎたりせず、中学生の子に直接注意してくれる地域の人や、学校に連絡してくれる地域の人がいるんだなぁと思うと、温かい気持ちになる。地域の人からの電話に、いじめではないと知りつつ、子どもに禁止と言い渡し、かばんを取り上げてしまった先生達の気持ちを想像すると、ちょっと可笑しい。そして、めげずにかばん持ちジャンケンを続ける子ども達、大人の干渉から逃れたい思春期の子ども達はそれでいい。

なんだかくすりと笑いたくなるような、そしてほっこり気持ちが温まるような、そんな出来事だった。

(2011年11月)