スタッフエッセイ 2011年10月

大阪のおばちゃん

津村 薫

大阪生まれの大阪育ちだ。

特にヒョウ柄を着る訳でもないし、話す時に手をひらひらさせて「奥さん、それでなー」と言う訳でもないし、笑いながら相手を叩いたりしないし、電車の座席の細い隙間に強気で座ったりはしないけど、大阪人の心意気?みたいなものは、それなりに持っているのではないかと思う。

特に、「笑い」に対するこだわりは強い。「決してオチのない話をしてはいけない」「楽しく学んでもろてナンボ」みたいな思いがある(笑)。

私の書く日記やエッセイを読んでくださる方たちと講演会場で会うことがある。それは参加者さんだったり、ご依頼先の担当者さんだったりするのだが、「うまくイメージがつながらなかった」「小柄でびっくりしました」と、ほぼ100%の確率で言われる。いかにも「THE大阪!」というおばちゃん像をイメージされているらしい。

講義後には、「最初はおとなしそうな感じの方だと思ったんですが、いざ話されると云々」という表現をよく使われる。「おとなしそう」が過去形なのは、マイクを持つとおとなしそう?な外見とは違う大阪色満載な講義を繰り広げるということらしい。

「なぜ講師になったのか」と問われれば、「そこにマイクがあるから」(登山家か!)とつい答えたくなるくらいだから、マイクを持つと何かのスイッチが入ってしまうのだと思う。

さてさて、私生活では意外にシャイなので、飴を常に持ち歩く以外に大阪のおばちゃん的なことは何もしないのだけど、先日、面白い出来事があった。

朝、講演会場に向かうため、JR環状線に乗っていた。もっと先まで行くつもりが、「この電車は大阪駅止まり」というアナウンスに驚いて、慌てて降りようとした。もうほとんどの人が降り、車内は空っぽになりかけている。

ふと目の前に、正体なく眠りこけた若い女の子。思わず、どこででも寝る我が娘が浮かぶ(笑)。揺すり起こして「終点ですよ」と言うと、女の子ははじかれたように飛びあがって、急いで電車を降りて行った。

私も降りようとすると、またもそこにはドア付近にいて、スマホに夢中で終点に気がつかない高校生女子。「終点ですよー」と言うと、彼女もびっくりして、慌てて電車を降りた。

 「今日は大阪のおばちゃんしてるわー。2度あることは3度あるか?」と自分で内心クスッと笑っていたが、3度目があった。その極めつけがこれ。

大阪駅から次の環状線に乗って、西九条駅に着いた時。同じホームの向かい側にはUSJに向かう、派手なデザインの電車が。遊びに行くらしい人たちが、どやどやと電車を移っていく。

すると私の横で「あっちに乗るんじゃないんかね?」「いやー、違うよー。あれは反対側に行く電車だってば」「どうなんじゃろうね」と明らかに他府県民の言葉とイントネーションで不安そうに語り合う若い女の子たちのグループがいる。

この環状線に乗っている限り、いつまで経ってもUSJには着かないぞ。「ユニバーサルシティ」駅行きに乗るか、西九条から「ゆめ咲線」に乗り換えねば。

「USJなら、あの電車に乗り換えないとだめですよ〜」と声をかけたら、また彼女たちは全員でびっくりして「早く!」「早く!」と声をかけ合いながら慌てて電車を移って行った。きっとドキドキして、それこそ脳内に「ターミネーター」のテーマソングが流れていたのではなかろうか。

頼まれもしていないけど、目に入ったり小耳にはさんだら行動せずにはいられない、正に「大阪のおばちゃん」行動。朝からトリプルでおばちゃんした私。

おせっかいだけど、周囲に温かい関心を持つというのはより良く生きるために不可欠だと思う。「私にオレさんなんて身内はおらへんで〜」「そんなお金あったら苦労せえへんわ!」というツッコミ力が優れているからこそ、「オレオレ詐欺」の被害も少ないと言われる大阪。大阪の良き力を活かして、これからも頑張っていこうと思う。それが大阪人の心意気やしな!

(2011年10月)