スタッフエッセイ 2011年10月

お笑いライブ

桑田道子

先日、実家近くのホールで漫才イベントがあると母に誘われ、行ってきた。もともと私の実家は、お正月に家族皆でなんば花月へ吉本を見に行くような、お笑い好きな典型的な大阪ファミリー。関西圏の人には「大阪弁じゃないんですね。ご出身は?」とよく尋ねられるが、いやいや、園児の時分からノリツッコミしてるような、大阪弁のなかでもかなり激しいほうだと思われる、生まれも育ちも河内の出身。

おっかけではなかったがダウンタウンの大阪時代も、学校帰りによく見に行っていた。今でも最寄駅ではよくテレビ取材をしているし、買い物にいけば、食事に行けば芸人さんを見かけ、テレビもお笑い番組満載…とお笑い文化にはなじみ深いのだが、仕事をするようになってからはお笑いライブを生で見ることから遠ざかっていた。

が、ここ数年、私と母との間にエハラマサヒロ氏ブーム到来!若手ながらも早くから全国区のテレビ番組に多数出演し、もともとの音感の良さもあると思うが、テクニシャンな芸が魅力的。古い知人にエハラ氏と同じように、声の良い、ギター弾きの「まー君」がいるので(名も同じマサヒロ、本職は教師)、エハラ氏もうちでは「まー君」と呼び、物まねや歌唱をテレビで楽しんでいた。その彼がすぐ近所に登場するというならば、それはぜひとも行ってみないと、というわけだ。

7組の出番があり、M−1優勝者(約5000組が出場する漫才コンテスト)から、R−1優勝者(約3500組が出場するピン芸人コンクール)、芸歴20年以上のベテランコンビなどなど。日程が微妙だったため、行けるかどうかなかなか確定できず、チケットを取るのが1週間前だったが、なんと前から2列目。芸人さんの表情や手足の動きもさることながら、息遣いまでリアルに伝わってくる。

客層はファミリー度も高く、子どもから年配の方まで幅広い。どんな客層にも応じられるよう、芸も幅広く準備されているだろうが、きっとその会場ごとにはある程度「若い子対象」「子ども対象」「女性対象」と絞れているほうがやりやすいのかなとは思う。でも、さすがプロ。芸人さん達は持ちネタをやりながらも、観客を巻き込み、アドリブ満載で、場を盛り上げていく。

トップバッターは、観客に手を叩かせ、声を出させ、会場の気分をその気にさせる。舞台の演者も、お客さんの反応が得られるとエスカレートしていく感じもあり、見る側・見られる側で「おもろい時間を過ごそう!」とその場をつくりあげていく(その反面、「○さんにはキャーという若い女の子の声援が聞こえたのに僕には誰も言ってくれないんですね」というような、「あ、これは決まり決まったセリフだな(そんな出来事はなかったので)」ということを言う芸人さんもおり、それは楽しい気持ちも冷める)。

ストレスマネジメントの講座で触れることもあるが…と以前、このエッセイで「泣く」を取り上げたことがある。「泣く」同様に、「笑う」のもストレス軽減には効果的である。笑うといっても、クスッ程度ではなく、おなかを抱えて笑うような大笑いが良いらしい。しっかり笑うと、体内ではがん細胞やウイルス感染細胞をやっつけてくれる「ナチュラルキラー細胞」が増え、免疫力をアップしてくれる。

確かに、生でお笑いを見て、周りを気にせず、大きな声で笑うのは、スカッとする。もちろんどんなところで笑うのも自由。左右前後の人と笑うところが違ったっていい。そんなこんなもひっくるめて、アッハッハと笑い飛ばすのは、健康にいいだろうことはさもありなんと思う。

  話を聴きに来てくださった方々へ、前に出てお話をさせて頂いている私の仕事。もちろん私は笑わせることが仕事の本旨ではないが(伝えるべきことはきちんと伝えながらも、上手に笑わせられる講師ももちろんいるので、それはすごいなーと常々思う)、聴いてくださる側と、話す側でその場をつくりあげていくのは、舞台と同じ。場に集われた皆と、一致して、良い学びを得られる時間によりなっていくよう努めたいと、プロの芸人さんの姿を見ながら改めて感じた。そのためには、自分のやるべきことをやりながらも、やっぱりよく(観客を)見ているんだと思う。そのあたりは、舞台は舞台でも、演劇や演奏とはまた異なる性質で、見る/聴く側との双方向性は講師と芸人とは似通ったところがあるのではないかと思うのである。理解度を確認しながら、促しながら、その場にいる方達によって中身がどうとでも変わりうる面白さと不安とが共存する。

「来てよかった」「〜と気づけた。また意欲がわいてきた」というような声をかけていただくと、本当に講師冥利に尽きる。そのためにも、ご依頼いただく1回1回のその場限りのライブ感たっぷりな学びの場を、しっかり捏ねあげていけるよう、頑張っていきたいと思う。

(2011年10月)