スタッフエッセイ 2011年9月

結婚ビフォーアフター

下地久美子

私が、夫と結婚を決めた一番の理由は、食べ物の好みが似ているということだった。デートで居酒屋さんに行くと、必ず「それ、私も今、注文しようと思ったところ!」と、ことごとく意見が一致して、これほど自分に似ている他人はいないと思っていた。他にも、映画の趣味や本の好みも共通点が多く、なんて価値観の合う人なんだ、これはまさに奇跡的な出会いと信じて疑わなかった。こういうことは、多くの結婚前のカップルが経験していることだろう。

しかし、結婚してみると、「あれ?全然似てない。全然違う」と思うことがポツポツと出てきた。例えば、「すき焼き」。私は、甘辛い味付けが好きで、生卵をたっぷりつけて食べるのが好みだが、夫は、甘いすき焼きが嫌いで、極力砂糖を入れないでほしいという。おまけに生卵をつけると、肉の味がわからなくなると言って、生卵をつけない。夫が実は卵があまり好きではないということを結婚後初めて知った。一方、私は、無類の卵好きで、みそ汁をはじめ、何にでも卵を入れたいタイプで、「この美味しさがわからない人はおかしい」と、夫を異星人のように感じるのである。

また、夫は、以前にも書いたが、インド人よりカレー好きと豪語しているだけあり、なんでもカレー味にしてしまう。野菜炒めをしても、「ちょっとカレー粉取って!」と、カレーパウダーを大量に振りかけるし、スープでも、サラダでも、カレー味に変えて、満足そうに食べている。こういうの、ちょっと理解に苦しむ。

食べ物の好みも違えば、生活スタイルにも違いが、次々と明るみになっていく。まず、私は、何があっても、どんなに眠たくても、必ず夜にお風呂に入るが、夫は朝風呂派で、しかも、朝から1時間ぐらい風呂に入っているのが信じられない。そのため、浴室の乾きが悪くて、カビが生えやすくなる。

休日の過ごし方も、夫はサイクリングやハイキングが好きで、すぐにどこかへ出かけてしまうが、私は、アウトドアにはあまり魅力を感じず、家でゆっくりしていたいと思う。

新聞も、夫はスポーツ欄しか読まないが、私は、スポーツ欄をまず読まない。テレビ番組の好みも全く合わず、お互いに「それのどこが面白いのかわからない」と思っている。

こういう価値観の不一致というのは、結婚しているカップルなら、誰もが思い当るところであろう。同じ人間の組み合わせなのに、結婚前と結婚後では、どうしてこれほど違ってしまうのか不思議でならない。きっとこういう不一致が高じていくと、離婚問題に発展していくのだろうと思う。

最近ふと思ったのだが、結婚前には、いかに自分と相手が似ているかの共通点を探しだそうとし、結婚後は、どれだけ似ていないか、違いにばかり目が行く傾向があるのかもしれない。また、結婚前には、相手の長所を見つけて、好ましく感じているのが、結婚後は、なぜか短所を一つ二つと発掘しては、ため息をつくという構図なんだろう。

カップルカウンセリングをしていると、よくもまあこれほど気の合わない2人が結婚したものだなと思うことがあるが、おそらく結婚前には、こんなに気の合う人は他にはいないと思って結婚したはずで、そう考えると、どこかに一致点や妥協点も見つかるのではと思ったりもする。

カップルが上手くやっていくには、お互いの違いを認め、受け入れる努力がいる。相手が「ちっともわかってくれない」と嘆く前に、自分を振り返って、相手をわかろうとしているのか点検する必要もあるだろう。って、これは、私自身に言っているのだけど…(笑)。

しかし、一方的に我慢を強いられていると感じるのであれば、別れるという選択も大切だと思う。まずは、よく話し合ってみることから始まるのではないだろうか。

(2011年9月)