スタッフエッセイ 2011年7月

学び〜ハンス・セリエ

桑田道子

先日、職員研修の講師としてお呼びいただいた先でのこと。

その組織の理事長さんが、開会の挨拶をなされ、「事前に頂いたレジュメを拝見すると、ストレッサ—とストレスとをわけて書いておられたので…」と、ご自身が高校生の頃に、ハンス・セリエの来日講演会に出席された話をしてくださった。

なんだか、感激して思わず涙が出そうになった。今からマイクを持って話さないといけないのに。

「ストレス」という言葉は、今や誰もが耳にしたことのある日常語である。つらい気持ちや嫌だなという思いを抱かせることや、プレッシャーを感じる出来事は誰もが直面することだが、その複雑なもやもやっとしたしんどさを、シンプルに「ストレスやわ」と気軽に言葉で表現でき、それを聞く周囲もなんとなく状況が理解できる。いろいろな意味が含まれる複雑な状況にピタッと言葉が与えられるってすごいなぁと思う。

ストレスについて、今年の3月号ニュースレターにちょうど書いたので、ご覧下さった方もあるかもしれませんが…この「ストレス」という言葉、そもそもは「なにかの刺激、外圧を受けて、物体がゆがむこと」を表す物理用語である。その「外からの刺激、圧力をうけて起きるゆがみ」は人間にも起きるのではないか、と物理学の言葉を生理学の領域に持ってきたのが、前述したカナダの生理学者であるハンス・セリエなのだ。

私は、「働く人のメンタルヘルス、身体と心のつながり」にとても関心があるので、それについて学ぶときには「いつも」「必ず」書物からハンス・セリエの名前を見ていた。そして、その名前を口にすることもあったが、書籍から知るものなので、ずっと昔の偉人のような印象だったのだ。子どもの頃に学校で習った「ダーウィンという人が進化論をとなえた」に似ている。

それが、理事長氏が話してくださった人となりを伺い、初めて、ハンス・セリエを立体的に感じたのである。さらには、自分が学んできた内容に息が吹き込まれたような、より生きたものとして実感できたのである。

改めて、学びとは、多方面から得られる知識と体感とが幾層にもわたって折り重なって自分の中にできあがっていくものなのだなと思う。

 大人になってから、ましてや仕事先で、さらに学びを深めていく機会をいただけるなんて本当に幸せである。いつまでも柔らかに吸収し、そしてフィードバックしていけるよう、こころがけていきたいと思う。

 

(2011年7月)