スタッフエッセイ 2011年1月

お正月料理

長川歩美

今から10年前、結婚して初めてのお正月を迎える際に、おせちづくり、お雑煮の味をどうしようかとはたと考えた。実家の母の味をもとに私なりにつくるのもいいかもしれないが、せっかく結婚したのだから、と夫の実家で夫の母、長姉、次姉に教えてもらいながら、おせちづくりに参加することにした。

行ってみてびっくりしたのが、かまぼこ・伊達巻・昆布巻き以外のほとんどのものを手作りすること!煮しめ、黒豆、数の子にはじまって、栗きんとん、田づくり(ごまめ)、菊花かぶ、くわい揚げ、松風(巌どり)、錦卵、いかの黄金焼き・・料理好きな女性三人が次々に仕上げていく料理はひとつひとつが美味しくてきれいで、私はできたての松風の切れ端などの味見を楽しみつつ(笑)手伝った。

料理そのものもさることながら、あまりものの有効活用も勉強になった。きんとんで出たサツマイモの皮を素揚げにして塩とシナモンシュガーをふって休憩時の美味しいおやつにしたり、松風(鶏ミンチに生姜や調味料を加えて練り、オーブンで焼くもの)のタネのあまりに煮しめのにんじん・しいたけ・ごぼうの切れ端を刻んでまぜこみ、ちくわ型の高野豆腐につめて、切り口の美しい一品にしたり。

おいしい物好きの夫の舌は、この母と姉の料理で育まれたのだと納得。せっかくなので一通りマスターするまで教えてもらおうと思って通っているうちに、大晦日には夫の実家に集まって、女性4人でおせち作りをするのが恒例となった。といってもすべてを4人一緒に作るわけではなく、担当制というか、母は煮しめと黒豆、長姉は錦卵、次姉は本格焼き豚を、それぞれ事前に作って持ち寄り、その他のものをプロ級の腕前の次姉を中心にみんなで作りすすめる感じ。毎年決まった味というわけではなく、きんとんのサツマイモを紫芋にしてみたり、煮しめに生麩をあしらってみたり、調味料の配分を変えてみたりと少しずつアレンジが加わる。夕刻、全部の料理が出来上がったら、それぞれ持参しているお重とタッパーに詰めてもち帰る。

教えてもらった中でこれいいなぁ☆と思ったのが田作り。ごまめを予めオーブンで焼き、しょうゆ・酒・みりんを煮詰めた蜜に絡める伝統料理だが、ここに予めオーブンで焼いたくるみも加え、鍋を揺すりながらさらに加熱すると、蜜がだんだん結晶してきてごまめとくるみにしっかりとくっつき、手でつまめる乾いた田作りに仕上がる。お酒のおつまみにもおやつにもなり、気軽にちょっとつまめるので、お正月だけでなく普段にもいいなぁと毎年思うが、この10年大晦日以外にはまだ作ったことはない(笑)。

料理上手な母や姉の手前、多少のプレッシャーを感じつつも、教えてもらうだけでなく私も何か担当しよう!と考えた末に、えび料理とさわらの幽庵焼きを作ってもっていくことにした。えび料理は旨煮、あられ揚げ、マリネ(おせちに?!)、えびすり身レンコンはさみ揚げ・・といろいろチャレンジし、最近はシンプルな含め煮に落ち着いている。さわらの幽庵焼きは、しょうゆとお酒にゆずのスライスを一個分贅沢に加え、そこに塩で水分を出したさわらの切り身を1時間ほど漬け込みオーブンで焼くというもの。ゆずの風味がさわらにほんとうによくあっていて、よくできたレシピだなぁと毎年思う。

このさわらのエキスのしみこんだゆずの漬けダレがもったいなくて捨てられず冷蔵庫にしまっているうちに、ふと思いついてお雑煮の出汁に加えてみたら、とても深みのある美味し〜い☆出汁に仕上がった(←あまりもの有効活用)。考えてみたらこのさわらゆずダレ、立派な魚醤といえるかも・・加えるタレの分量や具材をいろいろ試した結果、今のところタレは三が日で使いきるよう三等分した分量、具材は鴨の焼いたのと雑煮大根とせりが、この出汁には合うようだというところで落ち着いている。この流れで一日さかのぼって、年越しそばは鴨とねぎをバーナーであぶって鴨南蛮に。いずれも年に一度のご馳走だ。

この年末はいろいろと重なって、夫の実家には集まらずに品数を減らして一人おせち作りに挑戦してみた。一年目はとても出来ないと思っていたが、いつのまにか一通り覚えて(本格焼き豚はまだ無理、、)なんとかできるようになっている。おぉ!経験を積み重ねるって知らないうちに力になるんだなぁ〜。きんとんの色づけのくちなしの実がなくって、ちょうど家にあった黄味の鮮やかな安納芋でつくったブランデー入り!の栗きんとんが思いのほか美味しくできたのがうれしかった。

この10年を振り返ってみると(年越しそば)、おせち料理、お雑煮・・といったお正月料理は、私が受け継いできだ母の味と、結婚してから学んだ夫の実家の味が合流し、そこに自然な流れが生じ、ハプニングで変化がおき、どちらの実家の味でもない、新しい我が家ならではの味になってきているんだなぁと思う。

もう少し時間に余裕のある世代になったら、日本各地に散らばった友人同士集まって、それぞれが受け継ぎ、更新してきたその土地土地の家庭の味を、持ち寄ったり作りあったりしてわいわい楽しみたいなぁ―それにはもう10年、15年くらいかかるかな?。楽しみにしていよう。

(2011年1月)