スタッフエッセイ 2010年12月

1年を振り返って

渡邉佳代

ついこの間、前回のエッセイ「大阪街歩き」を書いたばかりだと思ったのに、あっという間に今回のエッセイ執筆の時期になってしまった。たった3ヶ月前のことなのに、随分昔のことのように思える。それほど、この秋・冬は毎日が精一杯で、とにかく1つひとつを丁寧に大切に扱っていこうと心がけてきた。その1つひとつに出会いやつながりが詰まっていて、今ようやくゆっくりと振り返り、あたたかくて深い満足感に包まれているように感じる。

折しも今年は、研究所の20周年記念という節目の年だった。私は2003年より研究所のスタッフとなったが、それ以前の研究所の歴史や先輩方が大切にされてきた思いを改めて知る機会になった。入社したばかりの頃は、とにかく先輩方の背中を見失わないように、今、自分の目の前にある仕事にがむしゃらに取り組んできた感がある。将来のビジョンなんてなかったのではないだろうか。今やっていることが、自分の将来にどうつながるかなんて、考える余裕もあったのかどうかさえ怪しい。ただ、確かに言えることは、目の前にあるものを大切に扱うこと、最後までやり遂げる努力をすることを常に意識してきたように思う。

振り返っても、研究所のカウンセリングからスクールカウンセラー、市民派遣相談、対人援助を学ぶ専門学校での非常勤講師などに携わり、機会があれば講師もアサーション・トレーニングから働く女性のワークライフバランス、ストレスマネジメント、子育て支援、援助者支援など幅広く取り組んできた。そうそう、自分が大切にしたい取り組みとしても、NPOのDV子どもプロジェクトや戦争とトラウマのテーマにも随分と力を入れてきた。

時々、出会う人から「何をやっている人なんですか?」「専門分野は?」と尋ねられることがあるが、どうも答えに窮してしまう。親しい人になら、苦し紛れに「とにかく色々!!」と答えてきたが、今年を振り返ると自分がやってきたことのつながりが見え始め、積み重ねてきたものを感じられるようになった気がする。どのテーマで講師としてご依頼をいただいたとしても、カウンセリングでどんな方々と出会うにしても、伝えたいメッセージは一貫してあったことに気づいたのである。

それは「どんな逆境の中でも希望を見失わないこと」「小さなことでも、自分で良いと思うことを1つひとつ積み重ねていけば、大きな力になること」「諦めずに良い人や情報とつながっていくこと」である。この秋・冬の講師だけでも、不登校とひきこもり、DVと虐待、女性と子どもの支援など様々なテーマをいただいたが、どれにも共通して軸となるメッセージである。そして、私自身が研究所に入ってから、絶え間なく先輩方や仲間たちからのサポートの中で受けてきたメッセージでもある。私はこの研究所に入り、学びながら自らもより良く生きることや、希望をもって生きることを身をもって体験してきたように思う。

幅広くがむしゃらにやってきただけに、汗かき、べそかき、空回りして悔むことも少なくなかったが、そのつど、気にかけて声をかけてくれる仲間や、惜しみなくサポートしてくださる先輩たちがいた。自分も少しずつ周りの人たちに助けられたり、弱音を吐くことが上手になってきたように思う。そうしてつながりの中でいただいてきたものを、カウンセリングで出会う方々や、講師先で出会う受講者さん、担当者さんにつないでいけたらと思っているが、私自身、出会う方々の生き様や生きようとされる命の力からエンパワーされることが多い。何とも得るものが多く、お得な職業なのだろうと思う。

今年は特にDV子どもプロジェクトの活動と運営に力を入れてきたので、来年も引き続き、DV・虐待被害にあった女性と子どもの支援をより深めていきたいと思っている。渡邉も時には真面目にエッセイで宣言してみるのだ。それにしても、入社当時から、いや子どもの頃からの、がむしゃらさ加減はどうにかならないものか。常々思うがきっと来年も相変わらず、がむしゃらに精一杯やっているような気がして、もう自分の性分だと諦めている。がむしゃらにやって壁にぶち当たり、痛い思いをしても助けてくれる仲間がいる。そう思えるだけでも、希望をもって生きていけるように思う。

(2010年12月)