スタッフエッセイ 2010年10月

今日の社会はどうですか?

安田裕子

「○ヶ月には・・・できるようになって」。発達心理学で知識として学ぶのみであった、赤ちゃんの発達。これまで実は、赤ちゃんに直接触れる機会がほとんどなかったのだが、身内に赤ちゃんが誕生し、赤ちゃんがとても身近な存在になった。遠方に住んでいるため、日々の成長の有り様やそれにともなう表情の変化を、送ってもらうデジカメ画像で楽しんできたここ数十日であったが、ちょっと足を伸ばして遊びに行き、姪っ子に初のご対面。たくさん触れることができた。

頭がずっしりと重たくなってきた、要求によっていろんな泣き方をするようになった、自分で首を回せるようになった、あちこちをきょろきょろ見ているの、ホント人間らしくなってきた(笑)・・・

この間の変化をいろいろと話してくれる。この世に生まれてからまだ一月半程度であるが、複雑なたくさんの発達の過程を辿ってきているのだなぁとしみじみ。もちろん、目が合うという動作ひとつをとりあげても、瞳をとらえたと思える時間間隔はまだ短い。どこを見ているのかなぁ?と赤ちゃんの視野に入ろうと身体を動かしていると、すかさずお母さんが、「○○ちゃん、今日の社会はどうですか?」と笑いながら赤ちゃんに問いかける。そうか、赤ちゃんも社会の動向を見ているんだなぁ、と冗談半分ではあったが妙に納得した。

現代社会には様々な問題がはびこっている。子ども虐待は、とりわけ深刻な社会病理のひとつであるといえるだろう。身体の大きさからいっても、到底たちうちできない子どもたちに向けられる、社会のひずみ、大人のエゴ。安心できるはずの場である家庭において、一番信頼できるはずの親によって、心身に深い傷を負ってしまうという、そして、生命すら奪われてしまうという、悲惨な虐待の現実。いのちを落としてしまった子どもたちは、生まれてきたよかったと思える経験を、ひとつでもふたつでもすることができたのだろうかと、胸が痛む。

姪っ子と向き合いながら、これからどんなふうに自分の人生を築いていくのだろうかと楽しみに思う反面、多少の不安が入り交じった気持ちになる。生きていく過程で、たとえ思いがけない危機や困難に遭遇したとしても、人とつながり、支え支えられながら、生まれてきて良かったと思う経験をたくさんしてほしい。私たち大人が今、そんな社会をつくっていかないといけないのだと、襟を正す思いになる。子どもは大人の背中を見て育つ。私たち大人の社会の向かう態度と姿勢と行動を、社会の有り様を、子どもたちはしっかり見ているのだと、背筋が伸びる思いだった。

(2010年10月)