スタッフエッセイ 2010年10月

人生ゲーム

下地久美子

私が小学生の頃、人生ゲームが爆発的に流行した。放課後になると毎日どこかの家に集まって、飽きもせずにこのゲームに熱中していた。ただルーレットを回して、出た目の数だけ進むスゴロクなのだけれど、予期せぬ不幸に見舞われたり、大幸運が降って湧いたりと、これからの人生の予行演習のような気分だったのだろうか。

夏の終わりに、高校時代の同窓会があった。それが、ふと人生ゲームのイメージと重なった。

1学年150人という小さな女子校なので、ほぼ全員が顔見知りだった。それでも同窓会が始まってしばらくは顔と名前が一致せずに戸惑ったが、すぐに学生時代の思い出が甦ってきた。

高校時代と全く変わらずひょうきんで場を盛り上げるのが上手いA子。当時は目立たなかったのに、ゴージャスなマダムに変身していてビックさせられたB子。卒業して30年もたてば、みんなそれぞれに、ドラマがある。

シドニー万博のときにコンパニオンのアルバイトに行って、そのままオーストラリア人と結婚したものの、10年後に離婚。有名ブランドでバリバリ仕事をしていたときに、癌にかかってしまったが、奇跡的に病気を克服し、今は別のもっと大きなブランド店のマネージャーをしているC子。

みんなが羨むような大きな旅館の跡取り息子と結婚したが、度重なる浮気とDVに耐えかねて別居。紆余曲折の末、新しく素敵なパートナーに出会って、ゴールイン目前のD子。

どうしても子どもが欲しくて人工授精から体外受精までありとあらゆる不妊治療に臨んだけれど、結局、子どもに恵まれず、夫と二人の人生を選んだE子。

他にも、普通の奥さんだったのに、幼児教育の世界でちょっと有名なカリスマ講師になっているF子。つい最近友だちの結婚式で知り合った年下のイギリス人と電撃入籍したG子。芸能人張りに3回も結婚と離婚を繰り返しているH子。平凡だけど幸せな専業主婦に納まっているI子と、いろんなオンナの人生を垣間見る思いがした。それは、30年前、一緒に机を並べて勉強していたときには想像もつかなかったような展開で、どういう出会いがあって、現在に至っているのか、聞けば聞くほど興味が尽きなかった。

もちろん人生は、ゲームのように運任せとはいかない。地道な努力の末に勝ち取った地位、身の引き裂かれるような思いで捨てたもの、思いがけず舞い込んできた朗報、親しい人との出会いと別れ。さまざまな出来事が折り重なって、それぞれの今がある。そして、10年後、20年後、どこで何をして暮らしているか、誰にも予想がつかない。でも、それでいいんじゃないだろうか。予測可能な人生なんてつまらない。一つのドアを閉めると、新しいドアが開くという。同級生たちの未来に続くドアが、等しく幸せでありますようにと願う、2010年の秋である。

(2010年10月)