スタッフエッセイ 2010年9月

人生の正午 III − 過去と未来を行ったり来たり

窪田容子

夏休みの終わりの頃、中学2年の息子が「宿題、初めて全部出せそうやわ〜」と嬉しそうに言う。「え、今まで、全部出したことなかったん?」と私がびっくりして聞いたら、「せやで」と涼しい顔。美術や社会など調べないといけない宿題も、インターネットで検索をして“テキトー”に仕上げている様子。出来さえすればOKで、良いものに仕上げたいという気はあまりないらしい。

そんな会話をした少し後に、私の中学時代の同窓会があった。当時、一学年は12クラスあり、約500名の同級生がいた。だから、同窓会とはいえ「お久しぶり」もいれば、「はじめまして」の人もいる。「お久しぶり」の人の中にも、「同じクラスやったのに、あの頃はほとんど話しなかったよね〜」という感じの男子もいる。思い出話やら今の話やら、中学時代に戻ったり、40代になったりしながら、話が弾んだ。

「私らが中学の頃って、夏休みの自由研究なんてあったっけ?」と私が聞くと、友達が「あったやん。一緒にしたやん。ほらアリ捕まえて」と言う。わぉ!思い出した。箱の中にいろいろな色の折り紙を敷き詰めて、そこに捕まえたたくさんのアリを入れ、アリは何色が好きか?という実験をしたのだった。折り紙の上を通ったアリの数を数えたけれど、アリはただウロウロするだけで、たいした結果は得られなかったという、最初から無理のある実験だった。

友達が「読書感想文書いたん覚えてる?2年続けて『山椒魚』で書いたやんな。あのめっちゃ短い話で。2年連続、ようちゃんにその本借してもらったで」と言う。あぁ、そうだった。なんて、“テキトー”に宿題をこなしていたのだろう。息子に何も言えないわと反省。
 息子が中学に入学したその年から開催されるようになった私の中学時代の同窓会。とても素敵なタイミングで、自分自身の中学時代を再発見するよい機会を与えてくれた。

これも夏休みの終わりの頃、珍しく息子の部活が休みの日があり、友達を家に呼んだ。息子は、私が仕事で一日家にいないと思っていたらしいが、私はその日は仕事を休みにして友達とランチにでかける予定だった。「お母さん、ゆーっくりしてきてや。その後、仕事に行ったら?絶対早く帰って来んといてや」と息子に懇願された。友達の中にいる息子の姿が見たいのだけどと思いつつも、遅めに帰宅したら、女の子4人、男の子2人が遊びに来ていた。
 ふとこの子たちも40代ぐらいになったら同窓会をするのかなぁとか、そして「家に遊びに行ったよね」なんて話したりするのかなとか、そんなことが頭をよぎった。

中年期は、少し立ち止まって、過去を振り返り、未来について思いをはせる時期だと言われる。中学生の息子と関わりながら、自分を息子の年頃に重ね合わせて、中学時代を振り返ったり。息子が私の年齢になった頃、中学時代をどのように振り返るのだろうと、息子を私の年代に重ね合わせて想像してみたり。だけど、その頃には自分は60代。いったいどんな暮らしをしているだろうと思ってみたり。気持ちは、過去と未来を行ったり来たり。これも中年期のなせることのひとつだろうか。なんだか不思議で楽しい時間である。

ちょうど同じ頃、高校時代の同窓会も開催されるようになったのは、きっと偶然ではない。みんな同世代、みんな中年期の迷いの中だもの。ともに、迷いながらも、素敵に年を重ねていけたらいいなぁ。

(2010年9月)