スタッフエッセイ 2010年9月

劇団四季「ウィキッド」に思う

前村よう子

私は芝居が好きだ。小劇団による狭い劇場での芝居から大劇場でのミュージカル、歌舞伎、オペラに至るまで、大好きだ。見るのも好きだし、演じるのも好きだ。そんな私が今、はまっている芝居がある。劇団四季による「ウィキッド」である。

「ウィキッド」との出会いは、USJ(ユニバーサル・スタジオ・オブ・ジャパン)であった。「『オズの魔法使い』の悪い魔女と良い魔女が、実は友達だった」といううたい文句に惹かれて、ハリウッドの「ウィキッド」を35分バージョンに短縮したものを、USJ内の専用舞台で見たのがきっかけだった。

一目見て、その内容に惹かれた。肌の色が緑だという理由で、親にも疎まれ、学校でも嫌われ、孤独に生きてきた主人公のエルファバ。彼女がシズ大学で出会い、生涯をかけての親友となるグリンダ。最初は反発しあっていた二人が惹かれ合い、一緒にオズの魔法使いに会いにエメラルドシティへ行き、そして・・・。

エルファバは後に悪い魔女と忌み嫌われるようになり、逆にグリンダは良い魔女として生きることとなる。そのきっかけとなる出来事を軸に、二人の友情と成長を描いた原作の、ごく一部分だけを描いているのがUSJバージョンだ。

たった35分のUSJバージョン、夏は暑く、冬は寒い専用舞台(建物ではなく、ただ天井と囲いがあるだけで、まるで昔のサーカス小屋)だけれど、USJに行く度に「ウィキッド」を観劇してきた。というより、「ウィキッド」見たさにUSJの年間パスポートまで購入した。だからその「ウィキッド」を、劇団四季によってフルバージョンで見ることができる、しかも大阪劇場でと知った時は、本当に嬉しかった。

USJバージョンでさえ、見る度にボロボロと涙を流しているのだから、四季バージョンは最初からハンカチとティッシュが欠かせない観劇となった。四季の会にも入会してしまった。そのお陰で他の演目も見るようになったのだが、それほど惹かれなかった。やはり、私にとって「ウィキッド」は特別な存在なのだ。

四季バージョンは、ハリウッドバージョンと同じ内容である。原作とは違い、万人向けに直されているものの、最後に希望の持てる納得のいく内容だった。とにかく、何度見ても、チカラを貰える作品だ。友情、成長、恋といった要素に加え、いじめや人種差別、民族紛争など様々な要素が含まれている。「人々の不満は、共通の敵を作ることで発散できる」「同じものでも見方を変えれば、違うものが見えてくる」「自分の頭で考えることをやめたら、どんなにバカらしいことでも真実に見えてしまう」等々、いろんなメッセージがあちこちに散りばめられている。一度では消化しきれないだろう。是非、いろんな人に「ウィキッド」を見てもらいたいなと思う。

この夏、勤務校の一つで、全校生徒やPTAと一緒に「ウィキッド」を鑑賞した。お陰で、世界史や政治経済の授業がしやすくなった。「ウィキッド」の中のメッセージを、いろんな課題で使えるようになったので。

いよいよ大阪四季劇場での「ウィキッド」上演も、来年2月までとなった。終わりが決まると、なんだか寂しい。あと何回、観劇することができるのだろうか。せめてもう一度、娘と一緒に観劇したいなと思う。

(2010年9月)