スタッフエッセイ 2010年6月

いざ!快適な空の旅

津村 薫

このエッセイを、関西空港に向かうリムジンバスの中で書いている。沖縄出張なのだ。

私は、飛行機が苦手だ。私の憧れる女性像に、「健脚で、ブラックコーヒーを飲み、飛行機が平気で、歯医者にビクともしない」というのがあるが(笑)、全部私にないものなのだ。最近は、健脚とまでは言えないにせよ、ちょっとくらい体を鍛えられたかな(本人比、笑)?と思うが、その他は、依然として不得意分野。コーヒーが飲めないのは、体質なんだから仕方ないとしても、問題は、飛行機と歯医者だよなあ。歯医者も、痛くなれば決死の覚悟でビビりながらも行く訳だから、これもまあ、良しとするか。

飛行機が苦手なのは、高所恐怖が大きな原因だろうか。離陸の瞬間には、誰に頼まれもしないのに、一緒に体を踏ん張らせ、着陸すれば、ようやく体の力が抜ける。揺れればひどく怖い気持ちになるし、とにかく苦手だったのだ。同じく高所恐怖な友人と、「下半身がヒュルルル・・・ってなるんだよね」(笑)と言い合ったことがある。

仕事で行く沖縄は7回目。それ以外にも3度飛行機に乗ったことがあるので、往復で考えると、十数回乗っている計算になるのに。シートベルトのサインが消えても、私はベルトが外せない。動くこともしないから、トイレになど一度も行ったことがない。海外旅行は厳しそうか?そのせいもあるけれど、なんと私は海外に行ったことがないのだ。あまり海外に縁がない人でも、新婚旅行で一度・・という人は結構いるものだが、私の場合、国内でのんびりする旅を選んだので、それもなかった。

それでも、人間、習うより慣れろとはよくいったもので、何度も乗っていると、苦手は苦手なりに、ちょっとずつ慣れてくるものだ。一緒に乗ることが多いのは、いつも沖縄に同行する、スタッフの森 。彼女は、飛行機なんぞへっちゃらの様子で、むしろ嬉しそうに外を眺めたりする。こんなふうになれるといいのになー。そう思っていた。

揺れる度にビビっていたけれど、そのうち、イメージトレーニングをしてみることにした。目を閉じて、古い列車に乗って、ガタガタしながら、のどかに田舎道を進んでいる光景を感じてみたり・・・そのうち、揺れを思考に入れない(揺れてる、揺れてる〜と考えても事態が変わる訳がないのだから、もう考えない!)で、読書にいそしむとか、他の作業に没頭することで、その場をやりすごすとか、ちょっとずつ、いろんな方法を身につけていったと思う。

そのうち、飛行機の師匠・森 から、「かおりん(私)は、だいぶん飛行機が上手になったね」と言われるようになった。ホント、飛行機搭乗に級を設定いて、「搭乗〇級」とか「搭乗〇段」なんてことにしてほしいものだ。初級くらいはクリアできそうだろうか。きっと黒帯にはなれないけど、以前の私からしたら格段の進歩なんだから、合格。

「快適な空の旅をお楽しみください」というアナウンスが、ピンとこなかった私。移動のために仕方なく使うものだから、快適とは程遠い感じがあったのに、最近は、ちょっと余裕があると窓の外を眺めたり、あれこれできることが増えてきて、そうなると楽しいものだから、不思議。

揺れても、CAさんの「飛行には影響ありませんので、ご安心ください」という言葉に怖がりの私は、かなり安堵させられる。良いタイミングで最適な言葉をかけるって、援助職にも求められる資質だな・・・などと思う。

さあ、また搭乗だ。快適な空の旅、意欲的にトライしてみようじゃありませんか!

(2010年6月)