スタッフエッセイ 2010年6月

千里の道も一歩から

西 順子

英語が喋れるようになりたい!今年のお正月、今年の目標は何だろう?とふと考えると、この言葉が浮かんできた。えっ?そうなの? とこの言葉が浮かんだことに自分でも驚いた。 

近年、参加しているトラウマ臨床の研修では、たいがいは外国人の方が講師。もちろん通訳付きだから、私も安心して参加できるし、講師の話はいつも興味深くワクワクしながら聞き入っていた。でも「もっと直接、講師の話を聞きとれたらいいのになぁ」とため息。「英会話を勉強すればいいのだろうけど、今さら無理だよなぁ」で終わり、日常生活に戻っていた。日常に戻れば、特に英語ができなくても、仕事も生活もできる。不自由はなかった。

それが、一年前から、外国人の方と接する機会が増えた。というより〈講師の話をただ椅子に座って聞く〉だけじゃなく、外国人の方と〈コミュニケーション〉が必要な機会が増えた。まずは、昨年からスタートしたソマティック・エクスペリエンス(SE)の研修では、一週間の研修が年二回。米国から来日された講師の先生、スタッフの方々から、一週間みっちりトレーニングを受けるが、その際に、通訳を通してしかコミュニケーションできない自分がもどかしかった。また、昨年は、トラウマのワークショップやトラウマ研究に同行する機会を得て、南京と韓国に行ってきた。海外は20年ぶり、しかも現地の方々と交流するという体験は初めてだった。そこで、中国語、韓国語はわからなくても、英語は世界共通語であることを実感した。せめて英語ができればもっとコミュニケーションできるのに・・と、話せないことが残念で、自分が情けなくなった。自分が伝えたいことが伝えられないって、話ができないって、こんなにもどかしいことだったなんて・・と、コミュニケーションがとれるってどんなに大事で、素晴らしいことかを改めて実感した。

「この年齢からでは遅い。もっと若い時に勉強しておかなくっちゃ。今さら無理」と、あきらめていたけれど、でも「思い立ったが吉日」と、新年に、英会話を習う事を決めた。積極的にというより、半ばあきらめモードの自分の背中を押した。何年か前の敬老の日の新聞記事にあった「60歳からマラソンを始め、ハワイホノルルマラソンに参加」という男性の話に「人生に遅いということはない。気づいたときからはじめても遅くない」と感動した記憶も、私を励ましてくれた。

年明けは、英会話教室探しからスタート。説明を聞いたり、体験授業を受け、ようやく自分の条件や希望にあったところを見つけ、スタートしたのが3月。週一回、英会話教室に通い出して、あっとう間に3カ月が過ぎた。

英会話教室は、とっても楽しい。カナダ出身の先生は、とっても明るく、サービス精神旺盛で、いろんなことを教えてくれる。テキストにまつわる海外の文化や習慣など。先生は、教養があって博識で、大阪のこともよく知っている。大阪のお薦めスポットやお店は私よりよく知っていて脱帽。ただ日本語があまり得意でないという先生は、説明もほとんど英語。最初はほとんど先生の言っていることがわからなかったが、今は何となく話の文脈や知っている単語、先生のジェスチャーから推測できるようになってきた。でも、自分が思っていること、先生に聞きたいことを思うようにしゃべることができない! 言いたいことを言えない、伝えたいことを伝えられないって、とってももどかしい。今や「先生ともっとコミュニケーションがとれるようになりたい」というのが当面の目標となった。夫も、いつか英会話を習いたいと思っていたらしく、私に便乗して一緒に習うことになったので、学ぶ同士がいるのも励みになっている。
 ただ、予習復習しないと、英語の上達は見込めない。もっと予習復習しないといけないな・・と思いつつ、日々の生活のなかでは、とてもそんな時間はとれないでいた。

そんな日々に追われるなか、先日、映画「プレシャス」を観にいった。長年性的虐待に関わってきた助産師さんに「これはぜひ、観とかなくっちゃね!」とお薦め頂いていたので、ぜひ観にいかなくっちゃと思いつつ、やっと行けたのが、最終日のレイトショー。上映していた部屋は、画面も見やすくちょうどいい席・・と思いきや、上映されると画面が近くて、字幕に視線をやると映像全体が見えなくなった。もっと映像に集中したいのに・・ともどかしく思いつつ、字幕と映像とに視線をいったりきたりさせた。主人公と母親の演技が凄かったが、特に主人公の表情にもっと集中して感じとりたかった・・と、ここでもまた、字幕を見ないといけないことがもどかしかった。悔しい気持ちにもなった。じっくり味わうために、もう一度、映画を観にいこうと思ったが、「いつか字幕なしで映画を観れるようになりたい」、これも一つの目標?!(いや夢?)になった。

そんな私の体験をスタッフに話していたら、「NHKで、チャロっていう番組が流行っているらしいですよ」と教えてくれた。早速見てみると、一日10分週4日の英会話番組で、アニメで構成されていた。これだったら続けられるかもしれない! しかも、チャロはとってもかわいい〜。次どうなるの?と次回が楽しみになる。今週は4日間頑張ってみたが、10分でも続けるのには根気がいりそう。でも習慣にできたらいいなぁ。

遅々たる歩みだが、「千里の道も一歩から」と自分を励ましつつ、1年後、5年後、10年後は今とは違っているかもしれないと、いろんな国の方々と英語でコミュニケーションがとれる日を夢見て、息長く・・この一歩の歩みを続けていこう。

(2010年6月)