スタッフエッセイ 2010年3月

めがね

村本邦子

私はものすごく眼が悪い。めがね屋さんへ行っても、「こんな人は稀」と驚かれるほどだ。高校の頃に、激しい運動をしたら、突然失明するかもしれないと言われたこともあるし、年を取ったら失明する可能性が高いと言われたこともある。本当のところ、根拠のある話かどうかよくわからないが、視力を失った人生については、時々、空想してみることがある。心配してもしょうがないので、そうなったらなったで、何とか生きていけるだろうと思ってはいるけれど。

めがね嫌いで、コンタクト歴が長く、めがねを使うのは寝る前くらいだったので、めがねを買うことはめったになかった。ところが、最近、年を取ったせいなのか、眼を酷使しているせいなのか、疲れると眼がしょぼしょぼして、霞んでよく見えなくなる。老眼も出てきたし、とにかく眼が疲れる。そんな時には、コンタクトよりめがねの方が楽になってきた。これまで、めがねの縁が邪魔で不快に思っていたのだけど、それを上回る不快感が出てきたということだ。というわけで、少しずつ、めがねの時間を長くしていこうかなと思い始めている。

これまでも、そのうち、年を取ったら、おしゃれめがねを集めて、ファッションとして楽しもうかしらという展望を持っていたのだが、そろそろそんな時期が来たのかもしれない。年末、思い切って、10年ぶりにめがねを作り変えた。これまで使っていたものは、調べてもらうと、めがねをかけても0.03という見えないものだった。当然ながら、クリアに見えるようになり、めがねの快適さが増した。

そんな折、ソウル出張を前に、たまたまどこかで手に取った雑誌で、立て続けに、「ソウルではめがねを作るべし」という記事を見かけた。何でも、品揃えが良いうえに、日本の3分の1の値段で作れるという。おしゃれめがねを作るチャンスかもと思って、ソウルの宿から徒歩1分のめがね屋さんに入って、結局、めがねを3つも作った(確かに3分の1の値段だった)。ド近眼はレンズがびっくりするほど高いのだけど、ソウルはレンズが安い。

うち、ひとつは、ダイビングの時用の色つきめがね(ダイビングの時は、水中めがねに度が入っているので、コンタクトをはずして海へ出るのだけど、めがねにサングラスがかけられないので、まぶしかった)。3月、海外出張が多いので、遠路の飛行機の中でも重宝するだろう。めがね初心者で、まだ要領を得ないことが多いけれど、これからボツボツ研究して使いこなすとしよう。少しずつ、老いていくことに適応していかなきゃなあと思っているところだ。

(2010年3月)