スタッフエッセイ 2010年2月

ただいま準備中

森葺a代

立春を過ぎ、冷たい風の中にも春めいた日差しを感じる2月。あちらこちらで梅の花がほころび、よく見れば桜の木も花芽を持ち始めた。自然界は着々と春を迎える準備中だ。

この春から大学生になる息子。通学時間が1時間あまりで、充分通えるにもかかわらず、「バイトもしたいし、サークルも楽しみたい。そうなったら、通うの邪魔くさいし」という理由から、一人暮らしをしたいという。自立心は応援したいが、そんな理由なん?・・・と思い、母は言う。「学校の近くに下宿したら通うのは楽になるけど、その他もろもろ自分のことは全て自分でやらなあかんねんで」。な〜んて、小さな子どもに言うようなことを言うと、「そんなこと、わかってる!」と勇ましい返事。『そりゃそうか』と思いながらも、『どこまでわかってるのやら』とひつこく思う母。その思いを見越してか、「去年、お母さんが出張で1週間いてなかったときも、大変やったけど、ちゃんと自分ひとりでいろいろやって学校に行ってた!」。とちょっと誇らしげ。そういえば、そうだった。『でも』、とまだ母は思う。相当ひつこい(笑)。「けど、料理だけはもうちょっと経験しといたほうがいいんちゃう?」これには、息子も「せやな。そう思う」と。これはラッキー!

そこで早速、「一人暮らし支援プログラム」とこっそり勝手に銘打って、仕事で一日留守する日、手始めに、材料も揃っていたので夕食に皿うどんを頼んでみた。「ええで」と快い返事。よしよし、幸先良いスタートだ。

しかし夕方、「皿うどんじゃないものができた(涙)」とメールが来た。「ん!?でも、どう失敗する?」と皿うどんじゃない皿うどんが想像ができず、それでも「ちゃんと作ってくれた」といううれしさで家に帰り、玄関を開けた。が、やはりなんの香りもしない。「失敗した」と苦笑いする息子。テーブルの上には、得体の知れないこってり茶色い塊が(笑)。いったいどうやったら、こうなるのか!?

苦労話を聞いてみると、意外と大胆で丁寧な息子の姿が浮かび上がった。火が強すぎたのだろう、キャベツが焦げだし、火を弱めたが焦げた人参は固かったらしい。「硬い人参はいややろ?だから人参だけ取り出して別のフライパンで炒めてん。そこまではよかってんけど、水溶きしたスープは温めておいたたほうがいいと思って、温めてん。けど、それがあかんかったんや〜」と(笑)。

でも、めげずにちゃんと後始末もしていたのには感心感心。「前はもっと柔らかくできたんやけど」と言いながら、卵焼きも作ってくれていた。「家に帰るとご飯ができているなんて、どんなにうれしいか!」、と心からお礼を言って、ほろ苦い皿うどんと、薄味でしっかりした堅さの卵焼きをほんわか幸せな気分で食べた。そう、息子も春に向けてただいま準備中なのだ。

(2010年2月)