スタッフエッセイ 2010年2月

世界こども美術館

桑田道子

先月、島根県での仕事のご依頼を頂き、喜んで出張に出た。というのも、私にとって島根県は今も祖母が住み、小学校にあがる前には3年ほど住んで毎月のように大阪と島根を行き来していた、とても馴染み深い土地。海で泳ぎ、野山を駆け回り、湖でボートに乗り、豊かな自然と親切であたたかい人達の中で育まれ、そこここで歴史の重みに触れるこの地は、私の子ども時代の思い出の舞台でもある。

これまでに100回近く往復してきた大阪−島根間。子どもの頃は両親の運転、免許を取ってからは一人で運転して祖父母の家へ行ったりと、たいてい車での移動だったが、今回は飛行機+特急での移動。飛行場を出てすぐの国道は、知っている道、山並みなのに、初めて目にする知らない場所のような、新鮮な気持ちになった。

今回は特急で2時間ほど離れた2つの市(県が東西に長い!)で2日続きの講座だったので、移動を控えていたが、1日目の会場のすぐ近くに「世界こども美術館」があるのを教えてもらい、これはぜひ観にいってみなくては!と駆け足ながら入館してきた。

美術館は、日本海に臨む山の中腹部に建ち、白黒の直線とグレーの曲線が混ざった少し迷路のようなエントランスを抜けた先の、真っ白な建物である。大きくはないが、壁面が流線形のバーチカルブラインドのようになっていて光が差し込んでいる。スタッフの方の説明によると、美術館は舟を模していて、「果てしない想像という海を、こどもたちがこの船に乗って元気よく冒険する」イメージで設計されたそうである。確かに、中も外も、その壮大さとワクワクな感じが詰まっている気持ちの良い場所だった。

ちょうど「こどもアンデパンダン展」が開催されていた。この展覧会は既に今年で13回目を数えるそうで、もとは市内の子どもたちを対象に作品を集め、展示していたのが、今では海外からの応募も増え、今年は16カ国、400点弱の作品が展示されていた。多国籍になると、色の使い方、題材の選び方、表情の描き方など、国の違いも現れていて面白い。

約300点は市内の小学生以下の子どもたちの作品で、その多くが、夏休みの自由工作で作成して一旦学校に提出して返却されたものを、秋に美術館に応募するらしく、夏を描いたものも多くみられた。この展覧会は作品に優劣をつけない、無審査、無賞であることが特徴とのこと。絵画や切り貼り絵から、実際に手で触って遊べる立体の工作、刺繍などの手芸品など様々なものが展示されていた。無審査であるなら、なおさら展示にセンスが問われそう、と見やすく飾られてある作品群を見ながら思った。

途中、つかず離れずの絶妙な距離で、美術館のスタッフの方が作品の解説をしてくださるのも、とても楽しかった。とても立派な立体物の作品が、実は家業の廃材を使っているものだったり(音楽的才能も漲っていてとても感動的!)、なぜこのお面を作ったのかという作者の意図や背景、美術館主催の教室に参加して学んだ筆使いを意識して描いた「印象派風」の絵など。応募者には、展示物すべてのデータ集が配布されるそうなので、さぞいい記念になるだろう。

さらに面白いのが、観に来た者が作品を観て感じたことや聞きたいことなど、その作者にメッセージをおくれることである。設置してある用紙にメッセージを書けば、それを美術館が国内外問わず、作者に届けてくれるのだそうだ。スタッフの方が「よかったら書いてあげてください」と言ってくれたが、「大人なので…(笑)」と訳のわからない返事で濁してしまった自分が残念な限り。

完成まで何日もかかっただろうなと思わされる大作から、もしかして10分程度で出来上がり?というようなものまで、いろいろな作品が並べられているが、その情熱のかけ具合度も含め、どの作品からもいきいきと個を発揮した伸びやかさが感じられる。見たり触れたりするだけで、作品に充満している子どもたちの明るいエネルギーが伝わってくるような、溢れ出すパワーをもらったような出会いだった。まったく評価にとらわれず、自分の表現を楽しんでいる子ども達の作品に囲まれるのはなかなか素敵な時間だ。

毎週、創作活動の教室も開かれているそうなので(版画や風船、お菓子作りなど)、お近くの方があれば、子どもたちとの参加、ぜひおすすめです。

浜田市世界こども美術館 http://hamada-kodomo.art.coocan.jp/

(2010年2月)