スタッフエッセイ 2009年4月

怪我の功名

窪田容子

先だって、初めての骨折を経験した。転んで尻もちをついたら痛くて起きあがれなくなってしまった。友達家族と遊びに出かけるところで、子どもたちは前々から楽しみにしていたのでそのまま遊びに連れて行ってもらうことにして、私は夫の車で病院に向かった。尾てい骨骨折で、全治3週間。1週間は座ってはいけないと言われた。まず頭を駆けめぐったのは仕事のこと。「仕事は休めないんですけど・・・」と医者に言ってみたが叱られた。

あわてて、仕事上で迷惑をかける人たちや、プライベートの約束を断らないといけない人たちに電話やメールで連絡をとった。突然仕事を休むというのは初めての事態でだった。また座れないというのはかなり不自由で、食事も、寝て食べるか、立って食べるかしかない。ずっと立っているのはしんどいし、ずっと横になっていると、気力がなくなってくる。なんで、今日遊びに行くことにしたんだろう。なんで、あの時あそこで転んだんだろう。もう少しああしていれば、こうしていれば・・・などと、考えても仕方のない後悔がふと浮かぶ。

そんな時に、夫の帰りが毎日遅いことを知っている友達から、「保育所のお迎えは3週間、引き受けたから」「仕事帰りに買い物して帰るから、言ってね」「子どもたち、うちで夕食食べてね」と言ってもらったり、「病院はあそこがいいよ」など、たくさんのお見舞いとサポートの電話やメールが入った。手料理を30分かけて歩いて届けてくれた人もいた。タイミング良く電話やメールをもらい、落ち込みかけた気持ちが暖かい気持ちに切り替わる。メールに返事を打っているうちに、一日が終わり、結局はどっぷり落ち込んでいる間がなかった。

思いのほか地域でたくさんの人と関わりを持っていたのだということに、改めて気がついた。何か困った事態が生じても、夫と二人で乗り越えないといけないわけでもない。遠方の身内に頼らなくてもいい。身近なところでいろいろな人に少しずつ助けてもらえば、何とかなるということ。迷惑をかけた人には申し訳なかったけれど、骨折という不測の事態を体験し、人の温かさが身にしみ、暮らしに安心が増したような気がする。

(2009年4月)