スタッフエッセイ 2009年4月

自然のエネルギーに満たされて〜西表島体験

西 順子

一年程前から、西表島に行ってみたい・・となぜだか心を動かされるようになった。その大自然に心惹かれたことはもちろん、ただ景色を見るだけじゃなく、自然のなかで「体験」することに、ワクワクと気持ちが動かされていた。家族を誘い、昨年末に計画を立て、先月末に、ついに実現することができた。

シーカヤック漕ぎ、滝を目指すトレッキング、海でシュノーケリングもしたいし・・と思うと、いろいろと調べたり、準備しないといけないことも多かった。仕事で忙しい時にここまでエネルギーをかけて、行く意味はあるのかな・・と、弱気な気持ちになる時もあった。

でも、実際行って、帰って来てみると、「ほんと行ってよかった!」「またぜひ、行きたい!」に尽きた。「さあ、明日からもがんばるぞ〜」と元気になって帰ってきた。西表島に移住された方が主催するツアーを二日間体験したが、島をよく知る方に案内頂けて、西表島の自然を満喫することができた。

ある一日。マングローブに覆われた川の中をシーカヤックで上流へと漕いでいく。川に入っていくと、やがて車の音も聞こえなくなり、聞こえてくるのは、鳥のさえずりだけ。人は、私たち家族とツアーガイドさん以外誰もいない。海に出た時の風の強さとは一変し、マングローブが防風林代わりとなって、川の中は穏やかで静か。雨が止んで、太陽の光が注がれ、それを喜ぶかのように、気持ちよさそうに、ひらひらと優雅に飛びかう蝶たち。秘境の地で、原始的な自然に包まれていると、人間である自分はなんてちっぽけな存在なのか、と思えてきた。なんてちっぽけな・・と思うと、自分が悩んだり、迷ったりしていることも、なんて些細なことかと思えた。自分がこうして生きているのは、たまたま、ただ自然に生かされているだけなのだと、命に対して敬虔な気持ちになった。私も周りの人たちも、こうして生きているのは、なんと有り難いことなのかと思うと、思わず涙も出そうになった。

川の上流にたどり着いた後は、カヤックから降りて、トレッキングで滝を目指す。ジャバジャバと川の中を歩いたり、岩場を超えて滝へ。岩場ではすべらないようにと、特に足もとに注意を払って歩き、よじ登る。一瞬「怖い」「もしも・・」と不安がよぎりそうになるが、感じるより先に、足元に神経を集中する。「不安や怖さがよぎるときも、とにかく信じて、地に足をしっかりとつけて、歩むこと」と、トレッキングは、まるで人生の教訓を学ぶかのようだった。信じるとは、「ゆだねる」という感覚であることを実感した。

河口に戻って来ると、この日は大潮の日(潮の干満差の大きい日)とあって、潮が引き、広い砂浜ができている。朝カヤックをスタートした時点から、水面の高さは2メートルほど違っていたかと思う。潮が引いた後の砂浜は小さなカニで埋め尽くされている。こんなに大きな潮の満ち引きがあるのか・・と、自然というより宇宙を感じた。

・・「体験する」とは、まさに「体」で「経験する」ことであった。五感で、体全体で感じて、体を使って、自然の生命のなかで、人間の生命を実感させられた。行く前は、こんなに深い体験ができるとは思いもよらなかった。本能のエネルギーを感じ、深い満足感で満たされた。一年前から、なんとなく行きたいと思っていた西表島だったが、自分の無意識が自分に必要なものを求めていたのかと、とても不思議な、納得する気持ちになった。

命には限りがあるからこそ、生きていることに感謝して、今自分にできることを大事に、明日からもまたがんばっていこう。そんな気持ちになって、今年度がスタートした。次回は、海でシュノーケリングをして海の中の世界も見たいと、いつかまた西表島に行ける日を楽しみにしていたい。

(2009年4月)