スタッフエッセイ 2009年2月

お風呂タイム

渡邉佳代

突然だが、もしも私のプロフィールに、「好きな場所」という欄があったら、私は迷わず、「南の島と温泉」と書くだろう。沖縄、バリ、サムイ島、グアムなど、私が行ったことがある「南の島」は数少ないが、暖かくてのんびりできるところが大好きだ。そこにいるだけで、パワーがみなぎってくる。

エッセイでも、しばしば南の島好きであることを漏らしてきたが、実は温泉好きアピールもしてきたことに、読み返してみて気づいた。暖かくてのんびりできるという点では、南の島に共通するが、冬の温泉もまた格別だ。

三大名湯の有馬温泉は、お馴染みの金の湯、銀の湯で、地域の人たちと一緒に湯を楽しむのもいい。こおろぎ橋で有名な山中温泉は、私の帰省がてらに途中下車して楽しむ。冬はカニ料理がうまい。城崎温泉も冬のカニ、湯めぐりが楽しい。奥飛騨温泉郷にある平湯温泉の雪見露天風呂も忘れられない。ここは冬の間、平湯大滝がエメラルドグリーンに結氷してライトアップされ、幻想的である。近場の北白川天然ラジウム温泉も、ひなびた雰囲気がいい感じ。全部ここに挙げきれないが、張り詰めたように冷たく、澄み切った冬空の下で、足湯につかりながら温泉卵を食べるのも、至福のひととき。

この春には地元の温泉で、家族でのお食事会+お泊り会を企画している。地元の温泉は、米どころ酒どころと謳われるだけあって、豊かな水脈が自慢。海に山に、泉質のよい温泉があちこちにある。お世話になった家族に、ゆっくりと食事と温泉を楽しんでほしいので、帰省するたびにホテルに打ち合わせに行っている。そのときに担当の方から、「帰りに温泉に入っていってね」と声がかかるのを実は楽しみにしている。ここの温泉は強い硫黄泉で、銀製品を身に着けてうっかり入ってしまうと、たちまち真っ黒くなってしまうほど。日によって、温泉の色が変わるので、七色の湯とも呼ばれ、湯の色を日替わりで楽しめる。

ストレス・コーピングでは、五感、すなわち、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚を楽しむのがよいと言われるが、温泉はこの五感全てが味わえる。色とりどりの湯や景色を愛で、チョロチョロ湧き出る温泉の音に耳を澄まし、温泉の匂いと、飲泉できるところでは温泉そのものをまさに味わう。温泉の肌触りも、なめらか、しっとり…とさまざま。

この前、ストレス・マネジメントの連続講座で、担当者さんと話していたのだが、温泉や岩盤浴といった、じんわり汗が出てデトックスにもなるコーピングは、体のなかの老廃物とともに、自分のなかのイライラやモヤモヤといったものまで排出されるという、心のデトックスにもつながるイメージがある。

かと言って、しばしば温泉に行けるわけではないので、普段は近場の銭湯で温泉気分を楽しむ。京都は古くからの学生街なので、それこそ銭湯はたくさんあるが、最近は店じまいするところもチラホラあって寂しい。京都の銭湯は「温泉」というので、最初はものめずらしかったが、温泉の名に引けもとらないところが、船岡温泉と衣笠温泉。船岡温泉は、脱衣所の欄間、天井の天狗、そして彩り豊かなタイルが圧巻されるほどの美しさ。衣笠温泉は3階建ての銭湯で、冷凍サウナがお勧め。どちらも銭湯料金で楽しめるのが嬉しいのだけど、風呂上りの銭湯ドリンク、懐かしのパレードやシーホープも楽しみのひとつ。

最近は温泉にも銭湯にも行ける時間がなく、もっぱら自宅でのお風呂タイムを楽しみにしている。忙しいときはシャワーで済ませたいところだが、そんなときほど、ちゃんとお湯を張って、ゆっくり浸かるようにしている。最近は、新鮮、手作り、安全、愉快をテーマにした、イギリス生まれのお菓子のような入浴剤、石鹸、マッサージバーにはまっている。日本製にはあまりないような色や香りを楽しめる。バニラ、蜂蜜、アボカド、ラベンダーなど、体によいものを楽しみながら、ケアできるのがいい。次の日に、ふと自分からお風呂のいい匂いを感じるのも幸せ。

もう少しで春がやってくる。それまで、1年で最も寒い季節を、ゆったりとお風呂で心と体を温めながら、ゆるりゆるりと暖かい春の訪れを待つとしよう。

(2009年2月)